【マルチプラットフォーム】A Fold Apart レビュー
「A Fold Apart(ア フォルド エーパート)」を購入しました。

世界を折りたたんだり裏返したりして進んでいくパズルゲーム。今回もe-shopでセールしているのを見かけて買った作品です。
パズル部分は折り紙・物語は遠距離恋愛がモチーフ。会いたいけど会えない2人の苦悩と苛立ちが描かれていて、ペーパークラフト風味のグラフィックながらストーリーは意外と明るくありません。
2時間30分でボーナスステージ含めた100%クリアを達成しました。定価だと高めに思えてしまうボリュームですが、セール価格の500円なら演出部分だけでもお釣りが来ます。

本作で繰り広げられるのは赤い人と青い人の相思相愛なカップルのお話。プロローグでお披露目される写真の数から推測すると、この2人は随分と長い間付き合っていたっぽいです。
未だ熱は冷めずこのまま順当に恋愛が成就するかと思いきや、青い人が大きな建築プロジェクトに携わるため飛行機の距離にある都市へ行くことに。一方の赤い人も地元の教師の仕事をやめたくないという都合があったため、結果的に青い人が戻ってくるまでの6ヶ月間は離れて暮らすことを決心したようです。
その間の2人を繋ぐ連絡手段はスマホのメッセージアプリのみ。幕間パートでは片方のキャラを操作して、送られてくるメッセージに対して返事しながら歩いていきます。
こちらが送るメッセージを2択から選ぶ場面がありますが、ここで答えた言葉で物語の結末が変わったり…はせず会話の内容が多少変わる程度。でも相手が傷つく可能性が低そうな言葉を自然に探していて、プレイヤー側に言葉を選ぶ難しさを意識させる手段として機能していたと思います。
文字だけでのコミュニケーションというのはニュアンスを感じ取るためのヒントとなり得る表情や声色が伝わらない分、対面での会話と比べて正確に意図を伝えるのが難しく、訂正も訂正が必要かを判断することも困難です。それ故にすれ違いや思い違いが発生しがち。
しかも読み手側の感情で捉えられ方がズレることもあり、素の状態で読めば悪意を感じられない文章であっても悩みがある時や落ち込んでいる時に読むと皮肉や嫌味のように捉えてしまうのが人間あるある。それが言葉の表と裏という本作のテーマの1つにもなっていて、作中の2人も相手から送られてきた何気ない言葉を不必要に裏読みしてしまい、現状に対する不満・過去の決断への後悔・将来への不安といったネガティブな感情が溢れだしてきてしまいます。
言葉の裏表というテーマ設定は普遍的ではあれど主題として取り上げられる事は少ない事柄で悪くありません。しかし、ストーリーテリングについては2人が落ち込むキッカケとなる言葉があまりにも些細すぎるのと、それで思い詰め始める2人も異常なまでに繊細すぎるように感じてしまって共感することができませんでした。
少しネタバレになってしまいますが特に気になった部分を挙げると、青い人が昨晩見た夢の話をしている途中で「街に一緒にいて、なにもかも完璧だったな」という文が送られてきた赤い人がショックを受けて「何もかも手放して、今すぐそっちに引っ越せっていうの?」と心の中でキレだす所。このシーンを初めて見た私は赤い人が怒り出した理由がわからずポカーンでした。
赤い人の内心に仕事を辞めてでも都市までついて行くべきだったのでは?という後悔に近い葛藤があったからつい反応してしまったというのは後からわかります。しかし、原因となった文章はあくまで夢の中の出来事を主観的ではあるものの説明しただけのもので、それまでも夢の中の話が続いていたので勘違いする余地もほぼなかったはずです。
そう考えるとこの流れで精神的に逃避行するまで悩んでしまうというのはちょっと非現実的に思えて、言葉の裏を読んだのではなく短略的に解釈してヒステリックになっているだけに見えてしまいました。ここに反応するなら他にも気になりそうなワードは出てくるのに、そっちは顔色一つ変えずにスルーするのも逆に不思議に感じてしまいました。
赤い人が繊細なだけかと思ったら青い人の方も大概で、夜は何しているのと聞いて「家に帰って独りぼっちでテレビを見るくらいかな…いつも通り…」という文章が帰ってきたら「契約を引き受けず、君と一緒にいた方が良かった?」と落ち込みだしてしまいます。ここはそう捉えられる文章だとは思うので違和感こそあまり感じなかったのですが、2人のキャラクターという面では傍から見ているとお互いにネガティブに捉え過ぎで凄くめんどくさいタイプに思えて共感はしにくくなっています。
悩むだけ悩んだ後は自分の中で折り合いを付けるだけでお終いというのも、ウダウダグダグダと落ち込んでいる様子を一部始終見せられていたプレイヤーからするとそれだけかい!とちょっとモヤモヤ。個人内で我慢できるなら我慢するのが関係を維持する上で一番無難な選択肢なのは確かですが、好き好き大好き過ぎて精神的逃避行をするまでギリギリの状態なら現状を改善するべく大好きな相手を信頼して相談してみればいいのに…と考えてしまいます。
ある意味似たもの同士でお似合いと言えばお似合いなカップルなのですが、ここまで不必要に悩んでストレスを溜めるぐらいならメッセージのみの会話はやめて電話かビデオ通話にしたらいいのにとツッコミたくなります。ビデオ通話の方が声も聴けるし顔も見れるしで良い事づくめだと思うのですが、頑なにメッセージアプリ以外の手段を使おうとしないのも非現実的に思えてしまった部分です。
言葉の表と裏というテーマ設定が極めて現実的かつ普遍的だからこそ、それで悩む2人の行動や動機にもリアリティが欲しかったと思います。Steamのストアページでは「誰もが共感できる、リアルな遠距離恋愛の物語」と紹介されていますが、少なくとも私にとっては共感しがたい話でした。
ただ、私に遠距離恋愛どころか恋愛経験自体がないからわからなかっただけで、実はカップルあるあるだったらゴメンナサイ。恋は盲目という言葉もあるし判断力が鈍るのかも…と思ったりもしましたがどうなんでしょう。
グラフィックが可愛いおかげで話の生々しさが薄れているのは良点。可愛い見た目だからこそ2人とも共感はできないけど嫌いにまではならなくて、また触れ合える日まで頑張って欲しいと思えました。
ちなみに、2人の性別は女×男、女×女、男×女、男×男の4パターンから選べます。性的マイノリティの方にも配慮した豊富な選択肢。


次はパズルパートについて。チュートリアル代わりの第1章は青い人の夢の中、第2章以降は赤い人と青い人が悩んでいる時に入り込む心情世界の一部がパズルになっています。
このパズルは折り紙のようにステージ自体を折ったり・裏返したり・回転させたりすることで解いていきます。青い人or赤い人を動かして星を取るか先に進むとその面はクリア。
Lスティックでキャラの移動・Rスティックでステージの折りたたみ・Aで折り目固定・Bで折り目を開く・L or Rで裏返しというのが基本の操作。一からやり直したい時はBボタン長押しかメニューからリセットできます。
ある程度進めると、Xで目の前にあるブロックを押したり引いたり・Aで段差を登ったり降りたり・Yでステージ全体を回転させることもできるようになります。斜め方向にも折りたたみ可能なステージも登場します。
パズルゲームとして見てもとてもユニークなシステムで面白かったです。青い人達がいる部分は折ることができないので頻繁な移動が必要になったり、折った所は上下逆さま(斜め折りの場合は90°回転)の形になるのも考慮しないといけないので意外と手こずります。
とは言っても、折る回数が5回程度でクリアできるステージしかないので難易度はかなり易しめ。基本的に解法を思いつけるかどうかまでが本番です。
全然解けない時もヒント機能に頼れば大丈夫。最後までヒントを見ることで半ば強制的にクリアまで案内してもらえるので、どんなにパズル下手でも詰まることはありません。
難点は全体的な動作がゆっくりしていてテンポが遅い事。青い人or赤い人の歩くスピードもブロックを押したり引いたり登ったり降りたりするのも、ヒントを見たりリセットを選んでやり直す時も、2人が会話している時も、作中のほぼ全てがゆっくりしていますしムービーシーンのスキップもできません。
落ち込んで心情世界に来ている以上キビキビ動くのもおかしいのでこれも演出の1つと見れば妥当だとは思うのですが、ゲームプレイの観点ではもう少し早く動いてくれーと思う場面は多かったです。パズルからパズルへの移動だけでも結構かかります。
プラス、ブロックやキャラを奈落に落としたりすると強制的に初期状態に戻ってしまう仕様も、手数が多くなるステージではやり直すのがちょっと辛かったです。折る向きや回転させる方向を間違えると即アウトという場面も結構あったので、最初からではなくミスする一手前に戻してもらえると嬉しかったかも。
心情世界内部の演出は秀逸で、青い人もしくは赤い人の思いがしっかりと風景や足場に反映されています。悩んでいる最中はどんよりと暗く荒廃した世界なのが、先に進んで心の折り合いを付けていくほど明るさを取り戻してカラフルな世界に戻っていきます。
青い人の世界は都会の街並み&寒色・赤い人の世界は自然の草木&暖色でまとまっているのも良く、心の変化に合わせて建物が崩れたり木が枯れたり・建物が増えたり草が生えてきたりと細かい所もダイナミックな所も変化があるのが見ていて楽しかったです。まるでミュージカルのような演出を見れただけでも本作を買って良かったと思ったレベル。
字幕のように表示されている彼ら(彼女ら)のセリフも、文字のフォントや色やサイズが単語の意味ごとに使い分けられていたり・パズル中にキャラの移動と同期して新しく文章が出てくるパターンもあって凝っています。
パズル面は50以上存在し、エンディングを見た後は2章分のボーナスステージも遊べるようになります。しかし、3時間あれば余裕で終わるボリュームは定価が2000円以上すると考えると控えめで、もう少し難しいステージや収集要素があっても良かったかなとは思います。
パズル部分のシステムはユニークながらも難易度は高くなく、やり方さえ閃ければパッと解けてどんどん進められるのは悪くなかった点です。ステージ中の演出も2人の心情がわかりやすく表現されていて見応えがあったので、パズルをおつまみに映像表現を楽しむゲームと言うのが正しい気がします。
一方でこれだけで終わらせるのはもったいないシステムと思ってしまったのも事実。エンディング後に出てくるボーナスステージも簡単でしたし、せっかくならチャレンジコース的な高難易度のステージが用意されていると嬉しかったです。
ストーリーに関しては2人が終始ウダウダしていただけという印象で、途中も最後もこれで解決したの?という感じが拭えず正直に言うと微妙でした。これは遠距離恋愛あるあるなのでしょうか…。
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世界を折りたたんだり裏返したりして進んでいくパズルゲーム。今回もe-shopでセールしているのを見かけて買った作品です。
パズル部分は折り紙・物語は遠距離恋愛がモチーフ。会いたいけど会えない2人の苦悩と苛立ちが描かれていて、ペーパークラフト風味のグラフィックながらストーリーは意外と明るくありません。
2時間30分でボーナスステージ含めた100%クリアを達成しました。定価だと高めに思えてしまうボリュームですが、セール価格の500円なら演出部分だけでもお釣りが来ます。
・タイトル:A Fold Apart
・発売元:Lightning Rod Games
・開発元:Lightning Rod Games
・対応ハード:
PC(Steam)/スマホ(AppleArcade)/PS4 ※海外ストアのみ/XboxOne/XboxX|S/Switch
・定価:
-Steam版:2300円(税込)
-PS4版:19.99ドル
-XboxOne/XboxX|S版:2393円(税込)
-Switch版:2000円(税込)
・発売日:
-Steam版:2020年4月17日
-PS4版:2020年5月19日
-XboxOne/XboxX|S版:2020年5月19日
-Switch版:2020年10月15日
・ジャンル:パズル
・IARC:3+(3歳以上対象)
・プレイ人数:1人
・権利表記:
© 2020 Lightning Rod Games Inc.
・公式サイト:
https://lightningrodgames.com/a-fold-apart/
どういう人にオススメ?
・少し変わったパズルゲームを探している人!
・遠距離恋愛の経験がある人!
良かった点
・グラフィックが可愛らしいおかげで話の生々しさが軽減されている
・紙のようにステージを折ったり裏返したりして解いていくパズルはユニーク
・心情世界内部での演出が凝っていて2人の悩み様が伝わってくる
賛否両論?点
・2人があまりにも繊細すぎるように思えて共感しにくい
・全体的に動作がゆったりしすぎていてテンポが遅い
・難易度が低い上にステージ数も多くなくボリュームが薄め
備考
(当ブログの画像はSwitch本体の機能を用いて撮影)
・発売元:Lightning Rod Games
・開発元:Lightning Rod Games
・対応ハード:
PC(Steam)/スマホ(AppleArcade)/PS4 ※海外ストアのみ/XboxOne/XboxX|S/Switch
・定価:
-Steam版:2300円(税込)
-PS4版:19.99ドル
-XboxOne/XboxX|S版:2393円(税込)
-Switch版:2000円(税込)
・発売日:
-Steam版:2020年4月17日
-PS4版:2020年5月19日
-XboxOne/XboxX|S版:2020年5月19日
-Switch版:2020年10月15日
・ジャンル:パズル
・IARC:3+(3歳以上対象)
・プレイ人数:1人
・権利表記:
© 2020 Lightning Rod Games Inc.
・公式サイト:
https://lightningrodgames.com/a-fold-apart/
どういう人にオススメ?
・少し変わったパズルゲームを探している人!
・遠距離恋愛の経験がある人!
良かった点
・グラフィックが可愛らしいおかげで話の生々しさが軽減されている
・紙のようにステージを折ったり裏返したりして解いていくパズルはユニーク
・心情世界内部での演出が凝っていて2人の悩み様が伝わってくる
賛否両論?点
・2人があまりにも繊細すぎるように思えて共感しにくい
・全体的に動作がゆったりしすぎていてテンポが遅い
・難易度が低い上にステージ数も多くなくボリュームが薄め
備考
(当ブログの画像はSwitch本体の機能を用いて撮影)
さり気ない言葉すら捉え方次第で悩みの種に

本作で繰り広げられるのは赤い人と青い人の相思相愛なカップルのお話。プロローグでお披露目される写真の数から推測すると、この2人は随分と長い間付き合っていたっぽいです。
未だ熱は冷めずこのまま順当に恋愛が成就するかと思いきや、青い人が大きな建築プロジェクトに携わるため飛行機の距離にある都市へ行くことに。一方の赤い人も地元の教師の仕事をやめたくないという都合があったため、結果的に青い人が戻ってくるまでの6ヶ月間は離れて暮らすことを決心したようです。
その間の2人を繋ぐ連絡手段はスマホのメッセージアプリのみ。幕間パートでは片方のキャラを操作して、送られてくるメッセージに対して返事しながら歩いていきます。
こちらが送るメッセージを2択から選ぶ場面がありますが、ここで答えた言葉で物語の結末が変わったり…はせず会話の内容が多少変わる程度。でも相手が傷つく可能性が低そうな言葉を自然に探していて、プレイヤー側に言葉を選ぶ難しさを意識させる手段として機能していたと思います。
文字だけでのコミュニケーションというのはニュアンスを感じ取るためのヒントとなり得る表情や声色が伝わらない分、対面での会話と比べて正確に意図を伝えるのが難しく、訂正も訂正が必要かを判断することも困難です。それ故にすれ違いや思い違いが発生しがち。
しかも読み手側の感情で捉えられ方がズレることもあり、素の状態で読めば悪意を感じられない文章であっても悩みがある時や落ち込んでいる時に読むと皮肉や嫌味のように捉えてしまうのが人間あるある。それが言葉の表と裏という本作のテーマの1つにもなっていて、作中の2人も相手から送られてきた何気ない言葉を不必要に裏読みしてしまい、現状に対する不満・過去の決断への後悔・将来への不安といったネガティブな感情が溢れだしてきてしまいます。
言葉の裏表というテーマ設定は普遍的ではあれど主題として取り上げられる事は少ない事柄で悪くありません。しかし、ストーリーテリングについては2人が落ち込むキッカケとなる言葉があまりにも些細すぎるのと、それで思い詰め始める2人も異常なまでに繊細すぎるように感じてしまって共感することができませんでした。
少しネタバレになってしまいますが特に気になった部分を挙げると、青い人が昨晩見た夢の話をしている途中で「街に一緒にいて、なにもかも完璧だったな」という文が送られてきた赤い人がショックを受けて「何もかも手放して、今すぐそっちに引っ越せっていうの?」と心の中でキレだす所。このシーンを初めて見た私は赤い人が怒り出した理由がわからずポカーンでした。
赤い人の内心に仕事を辞めてでも都市までついて行くべきだったのでは?という後悔に近い葛藤があったからつい反応してしまったというのは後からわかります。しかし、原因となった文章はあくまで夢の中の出来事を主観的ではあるものの説明しただけのもので、それまでも夢の中の話が続いていたので勘違いする余地もほぼなかったはずです。
そう考えるとこの流れで精神的に逃避行するまで悩んでしまうというのはちょっと非現実的に思えて、言葉の裏を読んだのではなく短略的に解釈してヒステリックになっているだけに見えてしまいました。ここに反応するなら他にも気になりそうなワードは出てくるのに、そっちは顔色一つ変えずにスルーするのも逆に不思議に感じてしまいました。
赤い人が繊細なだけかと思ったら青い人の方も大概で、夜は何しているのと聞いて「家に帰って独りぼっちでテレビを見るくらいかな…いつも通り…」という文章が帰ってきたら「契約を引き受けず、君と一緒にいた方が良かった?」と落ち込みだしてしまいます。ここはそう捉えられる文章だとは思うので違和感こそあまり感じなかったのですが、2人のキャラクターという面では傍から見ているとお互いにネガティブに捉え過ぎで凄くめんどくさいタイプに思えて共感はしにくくなっています。
悩むだけ悩んだ後は自分の中で折り合いを付けるだけでお終いというのも、ウダウダグダグダと落ち込んでいる様子を一部始終見せられていたプレイヤーからするとそれだけかい!とちょっとモヤモヤ。個人内で我慢できるなら我慢するのが関係を維持する上で一番無難な選択肢なのは確かですが、好き好き大好き過ぎて精神的逃避行をするまでギリギリの状態なら現状を改善するべく大好きな相手を信頼して相談してみればいいのに…と考えてしまいます。
ある意味似たもの同士でお似合いと言えばお似合いなカップルなのですが、ここまで不必要に悩んでストレスを溜めるぐらいならメッセージのみの会話はやめて電話かビデオ通話にしたらいいのにとツッコミたくなります。ビデオ通話の方が声も聴けるし顔も見れるしで良い事づくめだと思うのですが、頑なにメッセージアプリ以外の手段を使おうとしないのも非現実的に思えてしまった部分です。
言葉の表と裏というテーマ設定が極めて現実的かつ普遍的だからこそ、それで悩む2人の行動や動機にもリアリティが欲しかったと思います。Steamのストアページでは「誰もが共感できる、リアルな遠距離恋愛の物語」と紹介されていますが、少なくとも私にとっては共感しがたい話でした。
ただ、私に遠距離恋愛どころか恋愛経験自体がないからわからなかっただけで、実はカップルあるあるだったらゴメンナサイ。恋は盲目という言葉もあるし判断力が鈍るのかも…と思ったりもしましたがどうなんでしょう。
グラフィックが可愛いおかげで話の生々しさが薄れているのは良点。可愛い見た目だからこそ2人とも共感はできないけど嫌いにまではならなくて、また触れ合える日まで頑張って欲しいと思えました。
ちなみに、2人の性別は女×男、女×女、男×女、男×男の4パターンから選べます。性的マイノリティの方にも配慮した豊富な選択肢。

折って畳んで目的地を目指す折り紙風パズル

次はパズルパートについて。チュートリアル代わりの第1章は青い人の夢の中、第2章以降は赤い人と青い人が悩んでいる時に入り込む心情世界の一部がパズルになっています。
このパズルは折り紙のようにステージ自体を折ったり・裏返したり・回転させたりすることで解いていきます。青い人or赤い人を動かして星を取るか先に進むとその面はクリア。
Lスティックでキャラの移動・Rスティックでステージの折りたたみ・Aで折り目固定・Bで折り目を開く・L or Rで裏返しというのが基本の操作。一からやり直したい時はBボタン長押しかメニューからリセットできます。
ある程度進めると、Xで目の前にあるブロックを押したり引いたり・Aで段差を登ったり降りたり・Yでステージ全体を回転させることもできるようになります。斜め方向にも折りたたみ可能なステージも登場します。
パズルゲームとして見てもとてもユニークなシステムで面白かったです。青い人達がいる部分は折ることができないので頻繁な移動が必要になったり、折った所は上下逆さま(斜め折りの場合は90°回転)の形になるのも考慮しないといけないので意外と手こずります。
とは言っても、折る回数が5回程度でクリアできるステージしかないので難易度はかなり易しめ。基本的に解法を思いつけるかどうかまでが本番です。
全然解けない時もヒント機能に頼れば大丈夫。最後までヒントを見ることで半ば強制的にクリアまで案内してもらえるので、どんなにパズル下手でも詰まることはありません。
難点は全体的な動作がゆっくりしていてテンポが遅い事。青い人or赤い人の歩くスピードもブロックを押したり引いたり登ったり降りたりするのも、ヒントを見たりリセットを選んでやり直す時も、2人が会話している時も、作中のほぼ全てがゆっくりしていますしムービーシーンのスキップもできません。
落ち込んで心情世界に来ている以上キビキビ動くのもおかしいのでこれも演出の1つと見れば妥当だとは思うのですが、ゲームプレイの観点ではもう少し早く動いてくれーと思う場面は多かったです。パズルからパズルへの移動だけでも結構かかります。
プラス、ブロックやキャラを奈落に落としたりすると強制的に初期状態に戻ってしまう仕様も、手数が多くなるステージではやり直すのがちょっと辛かったです。折る向きや回転させる方向を間違えると即アウトという場面も結構あったので、最初からではなくミスする一手前に戻してもらえると嬉しかったかも。
心情世界内部の演出は秀逸で、青い人もしくは赤い人の思いがしっかりと風景や足場に反映されています。悩んでいる最中はどんよりと暗く荒廃した世界なのが、先に進んで心の折り合いを付けていくほど明るさを取り戻してカラフルな世界に戻っていきます。
青い人の世界は都会の街並み&寒色・赤い人の世界は自然の草木&暖色でまとまっているのも良く、心の変化に合わせて建物が崩れたり木が枯れたり・建物が増えたり草が生えてきたりと細かい所もダイナミックな所も変化があるのが見ていて楽しかったです。まるでミュージカルのような演出を見れただけでも本作を買って良かったと思ったレベル。
字幕のように表示されている彼ら(彼女ら)のセリフも、文字のフォントや色やサイズが単語の意味ごとに使い分けられていたり・パズル中にキャラの移動と同期して新しく文章が出てくるパターンもあって凝っています。
パズル面は50以上存在し、エンディングを見た後は2章分のボーナスステージも遊べるようになります。しかし、3時間あれば余裕で終わるボリュームは定価が2000円以上すると考えると控えめで、もう少し難しいステージや収集要素があっても良かったかなとは思います。
総評:ゲームシステムと演出は良い一方で、共感しづらいストーリーとテンポの悪さが足を引っ張っていた作品
折り紙のようにステージを折ったり裏返すことで先に進めるようになるパズルと遠距離恋愛カップルの心情を表した演出が良かった作品です。一方でテンポの遅さやボリュームの薄さなど気になる所も多々ありました。パズル部分のシステムはユニークながらも難易度は高くなく、やり方さえ閃ければパッと解けてどんどん進められるのは悪くなかった点です。ステージ中の演出も2人の心情がわかりやすく表現されていて見応えがあったので、パズルをおつまみに映像表現を楽しむゲームと言うのが正しい気がします。
一方でこれだけで終わらせるのはもったいないシステムと思ってしまったのも事実。エンディング後に出てくるボーナスステージも簡単でしたし、せっかくならチャレンジコース的な高難易度のステージが用意されていると嬉しかったです。
ストーリーに関しては2人が終始ウダウダしていただけという印象で、途中も最後もこれで解決したの?という感じが拭えず正直に言うと微妙でした。これは遠距離恋愛あるあるなのでしょうか…。
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