【Switch】『ベヨネッタ オリジンズ:セレッサと迷子の悪魔』を遊んだ感想&レビュー【クリア済】
『ベヨネッタ オリジンズ:セレッサと迷子の悪魔』を購入しました。

敵の攻撃を避けて一方的に打ちのめす爽快感とギリギリを攻めた表現が売りのアクションゲーム『BAYONETTA』シリーズ。そんなシリーズのスピンオフに当たるのが本作です。
ベヨネッタ本編はアクション部分はともかくとしてノリのクセと性癖がかなり強くニッチ気味な作品なのに、本作は方向性が180度変わっていて童話をゲームに落とし込んだような優しい雰囲気に包まれています。万人に向けられて作られているのは伝わってきますが、本編でのはっちゃけっぷりを知っている身からすると逆に違和感を感じてしまうレベルでベクトルが違います。
ちなみに『ベヨネッタ3』ではロダンの店で買える絵本と3つの鍵を揃えることで本作の体験版を遊ぶことができました。今でこそ伏線兼宣伝だったのだとわかりますが、3の発売当時は本作の情報は何一つ出ていなかったので当時はナニコレ?と思った記憶があります。
エンディングに到達するまでにかかった時間は10時間程。達成率は80%まで上げましたが、コレクションが埋まらず苦戦中。

本作で語られるのはセレッサがベヨネッタと呼ばれるようになる前、かつて見習い魔女だった頃のお話。
本編のセレッサは自信満々かつ強気でとても大胆な熟魔女ですが、本作では怖がりで自信を持てていない幼さを残した少女として登場します。あのベヨ姐さんにもこんな時代があったのねと少しビックリ。
後に彼女の力(物理)になる髪も猫耳やリボンに見える可愛らしい形でまとめていて、色気よりもあどけなさの方を強く感じます。まだ悪魔を宿したりはできませんが、かなり長く伸ばした先の三つ編みが走る度に揺れるのがキュート。
『ベヨネッタ2』でも語られていますが、彼女の出自は魔女の中でも特殊で故に他の魔女達からは疎まれており、幼なじみのジャンヌだけがこっそりと一緒に遊んでくれるという状況。母親に至っては一族の禁忌を破った事を理由に監禁されてしまっています。
そんな環境にいてもセレッサは母親の事が大好きで、マミーと呼んで慕う紛うことなきお母さんっ子。一人前の魔女になることを目指して魔女の集落を去り、モルガナという老魔女の元で修行するようになったのも母親を早く助けたいからという動機なのが凄く健気で泣いてしまいそうになりました…。
しかし早く一人前になって母親を助けたいという気持ちが先行するあまり、夢の中に出てきた男の子の「助けてくれたら力を貸してあげる」という話を信じて危険な妖精達が住むアヴァロンの森へ入ってしまうなど浅慮な所も見られます。そこでぬいぐるみに宿った悪魔のチェシャと一緒にピンチを乗り越えて成長していく過程が童話という形で語られるのが本作のメインストーリーです。
一応、本作のストーリーはベヨネッタ本編を遊んでいない人であっても1つの独立した作品として楽しめるように構成されています。時系列順で並べると一番最初に来るのが本作なのと前提設定も必要な所はしっかり教えてくれます(逆に言うと1と2のネタバレをいきなり食らうことになる点には注意)。
と同時に、本編では謎のままだった設定の補完も行われていたりもしてシリーズファンはなおのこと楽しめる作りになっているのがお得。チェシャのことも妖精のことも『ベヨネッタ3』では深く語られずじまいだったので、本作でガッツリと掘り下げてくれたのは嬉しかったです。
エンディング後に解禁されるジャンヌ外伝では3の黒幕であるシンギュラリティも出てきますが、コイツに関しては相変わらずよくわからない奴でしかなかったのはちょっと残念。3の宣伝代わりに出てきただけなのでしょうが、ホムンクルスに関する掘り下げも少しでいいので欲しかったです…(ベヨネッタ3のネタバレも含んでいる記述なので注意)。
また、ストーリーのみならずグラフィックも絵本風で統一されていて可愛らしいのも本作の特徴と言える要素。操作パートの3Dモデルもできるだけ2Dに見える工夫がされていて雰囲気バッチリ。
演出にも絵本らしい表現は多々見られます。イベントシーンに切り替わる時にページをパラパラとめくるムービーが流れたり、ナレーションも読み聞かせるような優しい声で落ち着きます。
急にお下品なネタが出てきたり本編のノリに切り替わったり…なんてこともないので、子どもも大人も安心して遊んでください。家族の前でテレビに映すには覚悟がいるお色気シーンや拷問シーンもないし、急に敵とダンスバトルしだしたり大怪獣バトルが始まったりもしません。

ベヨネッタ本編とは世界観やキャラクターの設定を共有していますが、システムや雰囲気に関しては全くの別物となっています。もし本編のような激しいバトルを期待しているのであれば、求めているものは残念ながら味わえないのでスルー推奨。
本作はどちらかというと戦闘よりも探索や謎解きの方がメインに据えられている印象でした。チェシャと一緒に仕掛けを解き・時に襲ってくる妖精達を返り討ちにして先へ先へと進んで行く感じで、全体的な難易度も低く抑えられていて誰もが遊べるアドベンチャーゲームに仕上がっています。
セレッサは特定の場所以外はジャンプで段差を乗り越えたりができないので、現状で進める道をしっかりと探す必要があります。アヴァロンの森は全エリアがシームレスに繋がっている構造になっていてそれなりに広いものの、どこに行くべきかは白いオオカミや青い足跡がナビゲートしてくれるので迷うことはありませんでした。
森の中にはティルナノーグという小ダンジョンも配置されていて、内部で戦闘だったりパズルだったりをクリアした後に最奥にあるコアを破壊すれば攻略完了となります。ストーリーを進める上で必ず行く必要があるもの以外にも、入り組んだ道の先に配置されている隠しティルナノーグも存在。
マップ上のティルナノーグは一度クリアすると消滅してしまいますが、一部は魔女のランタン(セーブポイント)から再挑戦やタイムアタックに挑戦できます。内部で取り逃した宝箱も再挑戦時に取り直せますし、タイムアタックで遊ぶとクリアタイムが記録される上に報酬も入手可能。
操作はコントローラーの左右でセレッサとチェシャの両方を同時に動かす必要があるため結構忙しめ。セレッサ側はLスティックで移動・Lでチェシャをハグモードに戻す・ZL長押しでイバラバインドなどの魔法の使用、チェシャ側はRスティックで移動・Rでデーモンモード移行もしくは属性に合わせたアクション発動・ZRで引っかき攻撃。
2人同時に操作しないといけないのは最初手こずりましたし、今でも戦闘中にどっちでどっちを操作しているかわからなくなることはありますが、パズルを解くぐらいなら慣れでどうにかなります。この操作感はプラチナゲームズが出している別作品『アストラルチェイン』に結構似ていると思いつつも、本作は戦闘がそれほどハードではないのでアクション慣れしていない人も大丈夫です。
2人はある程度までなら離れて行動ができますが、片方が画面に映らなくなるほど遠くに行くと暗転してそのエリアの入口からやり直しになってしまいます。チェシャの移動が面倒な時はLでハグモードにするとセレッサの元に自動で戻ってきてくるので、ずっと2人別々に動かさないといけないわけではありません。
また、セレッサはウィッチパルスという魔術で特定のオブジェクトに魔力を送ることができます。このウィッチパルスは植物を成長させて足場や梯子や橋にしたり・機械を起動させたりと、本当に多種多様な場面で使うことになるアクションです。
ウィッチパルスを成功させるにはZLを押したままLスティックをタイミングよく傾ける動作を2~3フェーズほど行う必要があります。使う機会が多い割に時間がかかる仕様なのはテンポを考えるとちょっと難点だと思ったので、設定上重要性の高いオブジェクトに働きかける所以外は1フェーズだけでも良かったかも。
チェシャの方は大きな爪で障害物を壊すぐらいしか最初のうちはできませんが、ストーリーが進むと属性の切り替えがY/B/X/Aで行えるようになります。各属性毎にできることは異なっていて、木霊モードなら口からツタを伸ばして物を引っ張ったり・石霊モードでは敵のビームを防いだりプレスで岩を破壊したり、など。
そのエリアに初めて訪れる時点では進めない道や壊せない障害物というのも普通に置かれているので、後に探索し直す前提のマップ構造になっています。ファストトラベル機能も中盤以降に解禁されますし、しっかり探索するなら4属性のパワーアップを全て習得してからがオススメ。
ちなみに、収集要素はムーンパール・インフェルノフルーツ・ヒトダマ救助・思い出のしおり・資料・隠れティルナノーグと豊富に用意されています。ムーンパールはセレッサのスキルツリー解放、インフェルノフルーツはチェシャのスキルツリー解放、ティルナノーグをクリアするとセレッサのHPを増やせるハートのかけら的なアイテムが手に入るので、探索がセレッサ達の強化と密接に繋がっています。
ヒトダマはアヴァロンの森に住む元人間の魂のことで、助けてあげると図鑑形式でプロフィールを確認できるようになったり・ヒトダマ広場では助けた人数に応じて人口が増える他にご褒美も貰えます。拘束器具に囚われてもがいている子は見ていて良心が傷んで流石にほっとけませんでした…。
凄惨な描写は控えめな本作ですが妖精達の生態は普通にえげつなくて、人間を森に捕らえて死ぬまでエネルギーを吸い取るだけでなく死んでヒトダマになった後も虐めまくるというおぞましさを見せつけてきます。見た目の可愛さで誤魔化されてはいますが、所々に出てくる設定でそういえばベヨネッタの世界だったわ…と思い出させてくれます。
ティルナノーグをクリアすることで近くの収集アイテムやヒトダマの位置が地図に表示される機能もあるのでヒントも豊富です。ただし地図上ではエリア同士の繋がりがわかりにくくなっているので、マークのある場所に中々たどり着けないケースも少なくなくコンプリートは意外と大変ですが…。
次はバトルパートについて。フィールドの一部やティルナノーグの内部には襲いかかってくる妖精達を全滅させないと先に進めないフロアがあったり、ボスクラスの強力な妖精との戦闘もあります。

セレッサとチェシャの体力は個別に管理されていますが、ダメージを受けてゲームオーバーになるのはセレッサの方だけ。チェシャは体力が無くなるとぬいぐるみの姿に戻ってしまいますが、セレッサに抱きかかえられたまましばらく経つと再度戦えるようになるので実質的に不死身です。
本編だと剣や棍棒を振り回したり銃を撃ちまくったりで1人でも十分強いセレッサですが、本作では非力な少女でしかなく相手を直接攻撃する手段は持っていません。しかし、ZLで発動させられるイバラバインドで敵を拘束してチェシャの攻撃を当てやすくするなどのサポートはできます。
チェシャがパワーアップするとイバラバインド中にチャージ攻撃を当てることで大技が発動するようにもなるので、セレッサも逃げ回るだけでなくサポートする立ち回りができるとグンと戦いやすくなります。チェシャだけで戦ってもザコ戦は普通に勝てるので必ずしもサポート必須というわけでもありませんが。
一方でボス戦に関しては、攻撃の隙を探してバインドしたり・戦場に置かれた仕掛けを活用しながら闘うのが必須になっていたりでギミック重視と言える相手が多いです。大多数のボスは難易度ふつうでも回復薬無しで倒せるぐらいには強くありませんが、ラスボスだけは本編と同じように回避とウィッチタイムを駆使した激しいバトルになるので結構手強いです。
道中は自分で薬を作らなくても宝箱から出る分だけで間に合っていましたが、ラスボス戦だけは回復薬を手持ち分(5個)全て全部使い切るぐらいには苦戦。事前に薬を限界まで作っていて正解でした。
謎解きは好きだけど敵と戦うのは苦手…という人用に、+ボタンメニュー>システム>設定>遊びやすさのこと>受けるダメージの項目を「すくなめ」や「うけない」にすれば実質無敵にもできてしまう親切設計も用意されているのでご安心を。もしくは敵の強さを「よわい」や「へなちょこ」にしてしまうのもアリ。
ウィッチパルスが苦手という人も自動でやってくれるようにも設定できたりと、オプションで遊びやすさを色々いじれるようになっています。難易度変更は即座に反映させられますし自分に合った設定を探すのも手。
最後に忖度無しで感想を述べると、システムやゲーム性の点では本作でしか味わえられない楽しさというのはあまりありません。少し意地悪な言い方にはなってしまうのですが、キャラクター・演出・設定以外の部分は平々凡々なアドベンチャーゲームという印象から逸脱できていませんでした。
一見すると目新しく見える部分についても、2キャラを1人のプレイヤーが同時に操作するのは同社開発のゲームにすらアストラルチェインという前例があるし、新能力で行ける場所が増えるというのもゼルダの伝説やメトロイドを始めとして非常に多くのゲームに見られる要素で、チェシャが獲得できる能力にも珍しいと言える物は特にありません。ウィッチパルスもスイッチのオンオフにミニゲームを取り入れた程度の要素なので、あってもなくても評価は変わっていないと思います。
ベヨネッタという既存のIPを利用していることを含めて、プラチナゲームズから出たフルプライスソフトとしては冒険してないとは思う作品です。確かに丁寧に作られてはいるのですが、持ち味だった角も丸められてしまったぶん物足りなさをも感じてしまう作りになってしまっていると感じました。
しかし、この手のアドベンチャーゲームの中では非常に遊びやすく仕上がっていること・ビジュアルの美しさ・ベヨネッタ世界の新しい切り口を生み出した作品としては価値を十分に感じられました。ベース部分は至って普通の味(とは言っても質は一級品)でもデコレーション部分によって価値が大きく上がるタイプで、そのデコレーションに価値をどれだけ見いだせるかが人によって変わってくるので賛否両論出るのは仕方ないかなと考えつつも、同ジャンルのゲームが好きかつベヨネッタ世界の設定やキャラクターが好きな私にとっては良好と思える作品でした。
でも私とは逆に本作で初めてセレッサのことや世界観が好きになった人に本編をやれと言えるかは…ちょっと微妙かも。ジャンルの違いも一つの理由ですが、何よりも雰囲気が違いすぎて幻滅してしまう人も少なからずいそうという理由で悩ましいです。
お下品(※褒め言葉)だったのがお上品になるのと・お上品だったのがお下品になるのとでは全然違いますし、個人的には後者の方が受け入れ難いとは思うので…。いやまあ本編もアクションゲームとしては良作ではあるのですが、マリオやゼルダと比べたら断然人を選ぶ作風なので…。
そのことを反映してかグラフィックもシステムもゲームジャンルも全くの別物。本編には満載だったエログロナンセンスな表現も鳴りを潜めており、子どもから大人でも楽しめる絵本のような作品に仕上がっている分、システム面では本作ならではの特徴と言える所が無く物足りなさも少し感じました。
世界観や基本設定こそ共有していますが、本編とは時間軸が大きく離れていてなおかつ時系列的に一番初めの話というのもあって独立した1つの物語としても読むことができるので、ベヨネッタシリーズを遊んだ事がない人も十分に楽しめる作りになっていたと思います。
逆に本編を1~3まで遊んできた身からしても、今までの謎について色々と補完されていて感極まる作品でした。あのベヨ姐の可愛らしい少女時代とか、チェシャとの馴れ初めとか、妖精についてとか…etc.。
ただし、本編をプレイ済みの人であっても単にアクションゲームとして楽しんだだけで世界観やセレッサ本人に興味が湧かなかった人・謎解きメインのアドベンチャーゲームがダメな人・アドベンチャーゲームが好きでもシステム的な目新しさを求めている人には残念ながらオススメできないかな…とは思いました。できれば本編の印象には囚われず単独の作品として手に取ってみてほしいです。
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敵の攻撃を避けて一方的に打ちのめす爽快感とギリギリを攻めた表現が売りのアクションゲーム『BAYONETTA』シリーズ。そんなシリーズのスピンオフに当たるのが本作です。
ベヨネッタ本編はアクション部分はともかくとしてノリのクセと性癖がかなり強くニッチ気味な作品なのに、本作は方向性が180度変わっていて童話をゲームに落とし込んだような優しい雰囲気に包まれています。万人に向けられて作られているのは伝わってきますが、本編でのはっちゃけっぷりを知っている身からすると逆に違和感を感じてしまうレベルでベクトルが違います。
ちなみに『ベヨネッタ3』ではロダンの店で買える絵本と3つの鍵を揃えることで本作の体験版を遊ぶことができました。今でこそ伏線兼宣伝だったのだとわかりますが、3の発売当時は本作の情報は何一つ出ていなかったので当時はナニコレ?と思った記憶があります。
エンディングに到達するまでにかかった時間は10時間程。達成率は80%まで上げましたが、コレクションが埋まらず苦戦中。
・タイトル:
ベヨネッタ オリジンズ:セレッサと迷子の悪魔
・発売元:任天堂
・開発元:プラチナゲームズ
・対応ハード:Switch
・定価:
パケ版:6578円(税込) / DL版:6500円(税込)
・発売日:2023年3月17日
・ジャンル:アクションアドベンチャー
・CERO:B(12歳以上対象)
・プレイ人数:1人
・権利表記:
© Nintendo © SEGA Published by Nintendo
・公式サイト:
https://www.nintendo.co.jp/switch/axb8a/index.html
どういう人にオススメ?
・謎解き重視のアドベンチャーゲームが好きな人!
・絵本のような世界を冒険してみたい人!
良かった点
・グラフィックもストーリーも絵本みたいで可愛らしい
・ダメージを受けない設定にできるのでアクションゲームが苦手な人も遊びやすい
・収集アイテムが多数用意されていてヒントも強力なので探索しやすい
・一部のティルナノーグはタイムアタックで繰り返し遊べる
賛否両論?点
・ウィッチパルスは使う機会が多いわりに時間がかかる
・地図ではエリア同士の繋がりがわかりにくい
・システム的には凡庸なアドベンチャーゲームの域を逸していない
備考
(当ブログの画像はSwitch本体の機能を用いて撮影)
ベヨネッタ オリジンズ:セレッサと迷子の悪魔
・発売元:任天堂
・開発元:プラチナゲームズ
・対応ハード:Switch
・定価:
パケ版:6578円(税込) / DL版:6500円(税込)
・発売日:2023年3月17日
・ジャンル:アクションアドベンチャー
・CERO:B(12歳以上対象)
・プレイ人数:1人
・権利表記:
© Nintendo © SEGA Published by Nintendo
・公式サイト:
https://www.nintendo.co.jp/switch/axb8a/index.html
どういう人にオススメ?
・謎解き重視のアドベンチャーゲームが好きな人!
・絵本のような世界を冒険してみたい人!
良かった点
・グラフィックもストーリーも絵本みたいで可愛らしい
・ダメージを受けない設定にできるのでアクションゲームが苦手な人も遊びやすい
・収集アイテムが多数用意されていてヒントも強力なので探索しやすい
・一部のティルナノーグはタイムアタックで繰り返し遊べる
賛否両論?点
・ウィッチパルスは使う機会が多いわりに時間がかかる
・地図ではエリア同士の繋がりがわかりにくい
・システム的には凡庸なアドベンチャーゲームの域を逸していない
備考
(当ブログの画像はSwitch本体の機能を用いて撮影)
セレッサが一人前の魔女になる前のお話

本作で語られるのはセレッサがベヨネッタと呼ばれるようになる前、かつて見習い魔女だった頃のお話。
本編のセレッサは自信満々かつ強気でとても大胆な熟魔女ですが、本作では怖がりで自信を持てていない幼さを残した少女として登場します。あのベヨ姐さんにもこんな時代があったのねと少しビックリ。
後に彼女の力(物理)になる髪も猫耳やリボンに見える可愛らしい形でまとめていて、色気よりもあどけなさの方を強く感じます。まだ悪魔を宿したりはできませんが、かなり長く伸ばした先の三つ編みが走る度に揺れるのがキュート。
『ベヨネッタ2』でも語られていますが、彼女の出自は魔女の中でも特殊で故に他の魔女達からは疎まれており、幼なじみのジャンヌだけがこっそりと一緒に遊んでくれるという状況。母親に至っては一族の禁忌を破った事を理由に監禁されてしまっています。
そんな環境にいてもセレッサは母親の事が大好きで、マミーと呼んで慕う紛うことなきお母さんっ子。一人前の魔女になることを目指して魔女の集落を去り、モルガナという老魔女の元で修行するようになったのも母親を早く助けたいからという動機なのが凄く健気で泣いてしまいそうになりました…。
しかし早く一人前になって母親を助けたいという気持ちが先行するあまり、夢の中に出てきた男の子の「助けてくれたら力を貸してあげる」という話を信じて危険な妖精達が住むアヴァロンの森へ入ってしまうなど浅慮な所も見られます。そこでぬいぐるみに宿った悪魔のチェシャと一緒にピンチを乗り越えて成長していく過程が童話という形で語られるのが本作のメインストーリーです。
一応、本作のストーリーはベヨネッタ本編を遊んでいない人であっても1つの独立した作品として楽しめるように構成されています。時系列順で並べると一番最初に来るのが本作なのと前提設定も必要な所はしっかり教えてくれます(逆に言うと1と2のネタバレをいきなり食らうことになる点には注意)。
と同時に、本編では謎のままだった設定の補完も行われていたりもしてシリーズファンはなおのこと楽しめる作りになっているのがお得。チェシャのことも妖精のことも『ベヨネッタ3』では深く語られずじまいだったので、本作でガッツリと掘り下げてくれたのは嬉しかったです。
エンディング後に解禁されるジャンヌ外伝では3の黒幕であるシンギュラリティも出てきますが、コイツに関しては相変わらずよくわからない奴でしかなかったのはちょっと残念。3の宣伝代わりに出てきただけなのでしょうが、ホムンクルスに関する掘り下げも少しでいいので欲しかったです…(ベヨネッタ3のネタバレも含んでいる記述なので注意)。
また、ストーリーのみならずグラフィックも絵本風で統一されていて可愛らしいのも本作の特徴と言える要素。操作パートの3Dモデルもできるだけ2Dに見える工夫がされていて雰囲気バッチリ。
演出にも絵本らしい表現は多々見られます。イベントシーンに切り替わる時にページをパラパラとめくるムービーが流れたり、ナレーションも読み聞かせるような優しい声で落ち着きます。
急にお下品なネタが出てきたり本編のノリに切り替わったり…なんてこともないので、子どもも大人も安心して遊んでください。家族の前でテレビに映すには覚悟がいるお色気シーンや拷問シーンもないし、急に敵とダンスバトルしだしたり大怪獣バトルが始まったりもしません。
ゲームシステムは謎解き重視

ベヨネッタ本編とは世界観やキャラクターの設定を共有していますが、システムや雰囲気に関しては全くの別物となっています。もし本編のような激しいバトルを期待しているのであれば、求めているものは残念ながら味わえないのでスルー推奨。
本作はどちらかというと戦闘よりも探索や謎解きの方がメインに据えられている印象でした。チェシャと一緒に仕掛けを解き・時に襲ってくる妖精達を返り討ちにして先へ先へと進んで行く感じで、全体的な難易度も低く抑えられていて誰もが遊べるアドベンチャーゲームに仕上がっています。
セレッサは特定の場所以外はジャンプで段差を乗り越えたりができないので、現状で進める道をしっかりと探す必要があります。アヴァロンの森は全エリアがシームレスに繋がっている構造になっていてそれなりに広いものの、どこに行くべきかは白いオオカミや青い足跡がナビゲートしてくれるので迷うことはありませんでした。
森の中にはティルナノーグという小ダンジョンも配置されていて、内部で戦闘だったりパズルだったりをクリアした後に最奥にあるコアを破壊すれば攻略完了となります。ストーリーを進める上で必ず行く必要があるもの以外にも、入り組んだ道の先に配置されている隠しティルナノーグも存在。
マップ上のティルナノーグは一度クリアすると消滅してしまいますが、一部は魔女のランタン(セーブポイント)から再挑戦やタイムアタックに挑戦できます。内部で取り逃した宝箱も再挑戦時に取り直せますし、タイムアタックで遊ぶとクリアタイムが記録される上に報酬も入手可能。
操作はコントローラーの左右でセレッサとチェシャの両方を同時に動かす必要があるため結構忙しめ。セレッサ側はLスティックで移動・Lでチェシャをハグモードに戻す・ZL長押しでイバラバインドなどの魔法の使用、チェシャ側はRスティックで移動・Rでデーモンモード移行もしくは属性に合わせたアクション発動・ZRで引っかき攻撃。
2人同時に操作しないといけないのは最初手こずりましたし、今でも戦闘中にどっちでどっちを操作しているかわからなくなることはありますが、パズルを解くぐらいなら慣れでどうにかなります。この操作感はプラチナゲームズが出している別作品『アストラルチェイン』に結構似ていると思いつつも、本作は戦闘がそれほどハードではないのでアクション慣れしていない人も大丈夫です。
2人はある程度までなら離れて行動ができますが、片方が画面に映らなくなるほど遠くに行くと暗転してそのエリアの入口からやり直しになってしまいます。チェシャの移動が面倒な時はLでハグモードにするとセレッサの元に自動で戻ってきてくるので、ずっと2人別々に動かさないといけないわけではありません。
また、セレッサはウィッチパルスという魔術で特定のオブジェクトに魔力を送ることができます。このウィッチパルスは植物を成長させて足場や梯子や橋にしたり・機械を起動させたりと、本当に多種多様な場面で使うことになるアクションです。
ウィッチパルスを成功させるにはZLを押したままLスティックをタイミングよく傾ける動作を2~3フェーズほど行う必要があります。使う機会が多い割に時間がかかる仕様なのはテンポを考えるとちょっと難点だと思ったので、設定上重要性の高いオブジェクトに働きかける所以外は1フェーズだけでも良かったかも。
チェシャの方は大きな爪で障害物を壊すぐらいしか最初のうちはできませんが、ストーリーが進むと属性の切り替えがY/B/X/Aで行えるようになります。各属性毎にできることは異なっていて、木霊モードなら口からツタを伸ばして物を引っ張ったり・石霊モードでは敵のビームを防いだりプレスで岩を破壊したり、など。
そのエリアに初めて訪れる時点では進めない道や壊せない障害物というのも普通に置かれているので、後に探索し直す前提のマップ構造になっています。ファストトラベル機能も中盤以降に解禁されますし、しっかり探索するなら4属性のパワーアップを全て習得してからがオススメ。
ちなみに、収集要素はムーンパール・インフェルノフルーツ・ヒトダマ救助・思い出のしおり・資料・隠れティルナノーグと豊富に用意されています。ムーンパールはセレッサのスキルツリー解放、インフェルノフルーツはチェシャのスキルツリー解放、ティルナノーグをクリアするとセレッサのHPを増やせるハートのかけら的なアイテムが手に入るので、探索がセレッサ達の強化と密接に繋がっています。
ヒトダマはアヴァロンの森に住む元人間の魂のことで、助けてあげると図鑑形式でプロフィールを確認できるようになったり・ヒトダマ広場では助けた人数に応じて人口が増える他にご褒美も貰えます。拘束器具に囚われてもがいている子は見ていて良心が傷んで流石にほっとけませんでした…。
凄惨な描写は控えめな本作ですが妖精達の生態は普通にえげつなくて、人間を森に捕らえて死ぬまでエネルギーを吸い取るだけでなく死んでヒトダマになった後も虐めまくるというおぞましさを見せつけてきます。見た目の可愛さで誤魔化されてはいますが、所々に出てくる設定でそういえばベヨネッタの世界だったわ…と思い出させてくれます。
ティルナノーグをクリアすることで近くの収集アイテムやヒトダマの位置が地図に表示される機能もあるのでヒントも豊富です。ただし地図上ではエリア同士の繋がりがわかりにくくなっているので、マークのある場所に中々たどり着けないケースも少なくなくコンプリートは意外と大変ですが…。
次はバトルパートについて。フィールドの一部やティルナノーグの内部には襲いかかってくる妖精達を全滅させないと先に進めないフロアがあったり、ボスクラスの強力な妖精との戦闘もあります。

セレッサとチェシャの体力は個別に管理されていますが、ダメージを受けてゲームオーバーになるのはセレッサの方だけ。チェシャは体力が無くなるとぬいぐるみの姿に戻ってしまいますが、セレッサに抱きかかえられたまましばらく経つと再度戦えるようになるので実質的に不死身です。
本編だと剣や棍棒を振り回したり銃を撃ちまくったりで1人でも十分強いセレッサですが、本作では非力な少女でしかなく相手を直接攻撃する手段は持っていません。しかし、ZLで発動させられるイバラバインドで敵を拘束してチェシャの攻撃を当てやすくするなどのサポートはできます。
チェシャがパワーアップするとイバラバインド中にチャージ攻撃を当てることで大技が発動するようにもなるので、セレッサも逃げ回るだけでなくサポートする立ち回りができるとグンと戦いやすくなります。チェシャだけで戦ってもザコ戦は普通に勝てるので必ずしもサポート必須というわけでもありませんが。
一方でボス戦に関しては、攻撃の隙を探してバインドしたり・戦場に置かれた仕掛けを活用しながら闘うのが必須になっていたりでギミック重視と言える相手が多いです。大多数のボスは難易度ふつうでも回復薬無しで倒せるぐらいには強くありませんが、ラスボスだけは本編と同じように回避とウィッチタイムを駆使した激しいバトルになるので結構手強いです。
道中は自分で薬を作らなくても宝箱から出る分だけで間に合っていましたが、ラスボス戦だけは回復薬を手持ち分(5個)全て全部使い切るぐらいには苦戦。事前に薬を限界まで作っていて正解でした。
謎解きは好きだけど敵と戦うのは苦手…という人用に、+ボタンメニュー>システム>設定>遊びやすさのこと>受けるダメージの項目を「すくなめ」や「うけない」にすれば実質無敵にもできてしまう親切設計も用意されているのでご安心を。もしくは敵の強さを「よわい」や「へなちょこ」にしてしまうのもアリ。
ウィッチパルスが苦手という人も自動でやってくれるようにも設定できたりと、オプションで遊びやすさを色々いじれるようになっています。難易度変更は即座に反映させられますし自分に合った設定を探すのも手。
最後に忖度無しで感想を述べると、システムやゲーム性の点では本作でしか味わえられない楽しさというのはあまりありません。少し意地悪な言い方にはなってしまうのですが、キャラクター・演出・設定以外の部分は平々凡々なアドベンチャーゲームという印象から逸脱できていませんでした。
一見すると目新しく見える部分についても、2キャラを1人のプレイヤーが同時に操作するのは同社開発のゲームにすらアストラルチェインという前例があるし、新能力で行ける場所が増えるというのもゼルダの伝説やメトロイドを始めとして非常に多くのゲームに見られる要素で、チェシャが獲得できる能力にも珍しいと言える物は特にありません。ウィッチパルスもスイッチのオンオフにミニゲームを取り入れた程度の要素なので、あってもなくても評価は変わっていないと思います。
ベヨネッタという既存のIPを利用していることを含めて、プラチナゲームズから出たフルプライスソフトとしては冒険してないとは思う作品です。確かに丁寧に作られてはいるのですが、持ち味だった角も丸められてしまったぶん物足りなさをも感じてしまう作りになってしまっていると感じました。
しかし、この手のアドベンチャーゲームの中では非常に遊びやすく仕上がっていること・ビジュアルの美しさ・ベヨネッタ世界の新しい切り口を生み出した作品としては価値を十分に感じられました。ベース部分は至って普通の味(とは言っても質は一級品)でもデコレーション部分によって価値が大きく上がるタイプで、そのデコレーションに価値をどれだけ見いだせるかが人によって変わってくるので賛否両論出るのは仕方ないかなと考えつつも、同ジャンルのゲームが好きかつベヨネッタ世界の設定やキャラクターが好きな私にとっては良好と思える作品でした。
でも私とは逆に本作で初めてセレッサのことや世界観が好きになった人に本編をやれと言えるかは…ちょっと微妙かも。ジャンルの違いも一つの理由ですが、何よりも雰囲気が違いすぎて幻滅してしまう人も少なからずいそうという理由で悩ましいです。
お下品(※褒め言葉)だったのがお上品になるのと・お上品だったのがお下品になるのとでは全然違いますし、個人的には後者の方が受け入れ難いとは思うので…。いやまあ本編もアクションゲームとしては良作ではあるのですが、マリオやゼルダと比べたら断然人を選ぶ作風なので…。
総評:セレッサの頑張りを描いた可愛らしい謎解きアドベンチャー
大胆不敵な熟女が派手に戦うベヨネッタシリーズ本編とは真反対で、気弱で未熟な少女が健気に冒険する様を描いたアドベンチャーです。タイトルにはベヨネッタの名前を冠していますが、主人公は「セレッサ」という1人の見習い魔女であって「ベヨネッタ」ではありません。そのことを反映してかグラフィックもシステムもゲームジャンルも全くの別物。本編には満載だったエログロナンセンスな表現も鳴りを潜めており、子どもから大人でも楽しめる絵本のような作品に仕上がっている分、システム面では本作ならではの特徴と言える所が無く物足りなさも少し感じました。
世界観や基本設定こそ共有していますが、本編とは時間軸が大きく離れていてなおかつ時系列的に一番初めの話というのもあって独立した1つの物語としても読むことができるので、ベヨネッタシリーズを遊んだ事がない人も十分に楽しめる作りになっていたと思います。
逆に本編を1~3まで遊んできた身からしても、今までの謎について色々と補完されていて感極まる作品でした。あのベヨ姐の可愛らしい少女時代とか、チェシャとの馴れ初めとか、妖精についてとか…etc.。
ただし、本編をプレイ済みの人であっても単にアクションゲームとして楽しんだだけで世界観やセレッサ本人に興味が湧かなかった人・謎解きメインのアドベンチャーゲームがダメな人・アドベンチャーゲームが好きでもシステム的な目新しさを求めている人には残念ながらオススメできないかな…とは思いました。できれば本編の印象には囚われず単独の作品として手に取ってみてほしいです。
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