【マルチプラットフォーム】『コーヒートーク』を遊んだ感想&レビュー【クリア済】
『コーヒートーク』を購入しました。

3月辺りにVA-11 Hall-A(ヴァルハラ)と本作でどちらを買おうか悩んでいた所に、本作がちょうどセールしていたので購入しました。遊んだのはSwitch版。
本作はヴァルハラのフォロワー作品。舞台がバーかカフェかという違いはあれど、どちらも店のマスターとして営業しつつ客の悩みを聞くという内容は一緒です。
本作のメインクリエーターであったモハメド・ファーミ氏は今年3月に32歳の若さで亡くなられたとの事。同氏のご冥福をお祈りします。

エルフなどの古典的なファンタジーに出てくる種族が現代の人間と同じように暮らしているシアトルに、主人公が経営するカフェ「コーヒートーク」は建っています。
主人公であるバリスタ(名前変更可能)が運営するこのカフェは夜のみの開店ということもあって、大繁盛しているとはいえず静かで落ち着いた雰囲気。やってくるのも顔なじみになる人達ばかりで客足は少ない方です。
巻き起こるイベントについても多少のアクシデントは起これど、急に銃撃戦が始まって避難したり戦いに行ったりすることはなく地味~な日常で進行していきます。派手さはないけれども深みは確かにある物語。
バリスタはプロローグからエンディングまでカフェの外に出ることが一切ありません。なのでこの世界の情勢を知るには客の話に耳を傾けるか・一日の初めに読める新聞記事から推察することになります。
出てくる登場人物の大半が人間とは違う種族ではありますが、実際に描かれるのは現実世界とそこまで変わらない地に足着いた世界。
ファンタジーの種族が現代社会を作り上げたらどうなる?という思考実験を再現したものではないので生活そのものは我々の世界とそう変わりませんし、カフェ内で繰り広げられる話題も一部を除いて良くも悪くも「現代社会にありがち」な悩みばかり。
エルフとサキュバスのカップルの話は人間同士でもお互いの家柄や人種による価値観の違いへ置き換える事ができるし、世間からの目が厳しい人狼という種族の話に至ってはそのまま有色人種やマイノリティの人達への差別問題に置き換えられます。
見た目こそファンタジー種族に入れ替えられてマイルドになっているとはいえ、話の内容そのものはストレートにナイーブかつ根深い問題を扱っているので、読んでいて考えさせられるものが多かったように感じました。
日本に住んでいると他人種やマイノリティの人への差別は(正直に言ってしまうと)あまり馴染みがない問題で近年のグローバル化によって少しずつ国内でも騒がれるようになったという印象ですが、一旦海外へ踏み出すと古くから側に存在する問題であるだけに悩んでいる人もとても多いのだと思われます。
このような世相を反映した結果生まれたのが本作に出てくる悩めるキャラクター達だったと考えられますが、個人的にはむしろ人間しかいない社会でも差別が存在するという皮肉を混じえてあえてファンタジーの世界で同様の問題を描いたのかな…とも考えてしまいました。
当事者でもない日本人の私がどうこう言える立場ではないのですが、悩んでいる人がいる事実はノンフィクションだと思うと少しドキッとしてしまいました…。それでも作中の当事者達は本人なりの折り合いを付けてくれるのがこちらにとっても救いかもしれません。
ゲーム内時間で14日経つとエンディングを迎え、メインストーリー1周は3時間あれば終わるのでボリュームは控えめ。サクッと遊べるノベルゲームを探している人にはちょうどいいかも。
ここからはやってくるお客様について簡単に紹介します。最初に来るのはフレイヤという人間の女性ライターで、彼女は小説を書くための書斎兼インスピレーションを得る場所としてカフェへ連日訪れてくれるお得意様です。
ゲーム内スマホからは実際に彼女が書いた短編小説を読むこともできます。ストーリーが進むと小説の方も更新されていくのですが、ここから彼女が他の客の問題をどう捉えているか少しだけわかるようになっています。
人間のお客にはもう1人巡査官のジョルジというおじさんもいて、こちらもお得意様と言えます(ただしミルクアレルギー)。彼はどちらかというと他の客にアドバイスを与える立場であることが多かったです。
他の種族のお客さんは、相思相愛ながらも家族が恋人を認めてくれないことに苦悩するエルフのベイリースとサキュバスのルアの異種間カップル、世間から羨望の眼差しを向けられているバンパイヤのハイドと種族柄肩身の狭い立場である人狼のガラのタッグ、大手ゲーム開発会社で働くオークのマートルとインディゲーム開発をしている人魚のアクアが出会ったり、アイドルとして活躍しているネコミミ娘のレイチェルと娘との距離感を掴めないでいる父親のヘンドリー、果てには他の星からお相手を探しに来た宇宙人のニールまで来ます。
こうして羅列すると結構な数の登場人物がいますが、どの客も個性的なビジュアルと悩みを持っているので覚えるのは難しくないし・同時に会話に入ってくるのは多くても3〜4人なので特定の問題だけに集中できる仕様です。
バリスタはあくまでも傍観者で実際に悩みを解決するのは本人や他の客からのアドバイスなのは一貫しています。特定の場面で特定のドリンクを出すと結末が分岐する要素もあるので多少は手助けしているとも言えますが、根本的な部分は完全に本人任せ。
そんなバリスタ自身の種族も気にならなくもない部分ですが、一応最後の最後でなんとなーく考察の余地がある程度にぼかされながらも明かされます。2周目からは皆のセリフが多少変わる他にバリスタが勝手に口を滑らせてタイムルーパーだとバレそうになる(ネタバレ)部分もあります。
繰り広げられる話について、記事の上の方で「一部を除いて良くも悪くも「現代社会にありがち」な悩みばかり」と記載しましたが、ここで除いている一部がニール関連の話です。彼は宇宙人ということもあってやることなすことが全てトンチンカンなので他の客とは一線を介して現実離れしています。
でもニールはただ無知可愛いコメディリリーフというだけではなく、作中でも特殊な存在として目立つことで他の話の現実味を強くするための役割も担っているのかなとも思いました。そういう立場のキャラは印象に残りやすいのもあって個人的には結構好き。
しかも、エピローグにてイケメンドクターの姿で現れて主人公の同類であることをバラしてきます。そういう意味では超がつくほど重要人物なので目立っていた理由もわからなくないです。
纏めると、公共の場で他人の会話に聞き耳を立てて聞いてしまうような人には向いている一方で、大量のファンタジー要素や壮大な物語を期待している人には向いていない作品です。言ってしまえば好き嫌いが人によって大きく分かれます。
ただハッキリ言えるのは、雰囲気も終始落ち着いているし・BGMもカフェで流れているようなジャズ風味の心地よいものとなっていて、こちらもコーヒーを飲みながら遊ぶには最適のゲームということ。私はコーヒーが飲めないのでペットボトルの午後の紅茶を飲みながらのプレイでしたが…。
前述の通り複雑な事情の話題や性的な内容も少しあるので、コーヒーが飲める年齢になってからプレイしましょうという感じのゲームです。

カフェのマスターという立場である以上、ただ話を聞いて終わりではなく注文されたドリンクを作って提供することができます。
注文の形式は色んなパターンがあり、目的のドリンクに何が入っているかをヒントとして教えてくれることもあれば・名前だけ伝えられて作ってみろと言わんばかりの注文もあったり・常連客恒例の「いつもの」を注文されたり…等々。
作る時はベースをコーヒー・紅茶・抹茶・ココア・ミルクから1つ、フレーバーをコーヒー・紅茶・抹茶・ココア・ミルク・レモン・ミント・しょうが・シナモン・はちみつから2つ選ぶだけで作れます。それ以外の操作はいらない簡単レシピ。
各材料はほっこり感・さっぱり感・甘み・苦味といった味のステータスも持っているので、もし味の指定があればそこもこだわる感じ。甘みを追加するのに砂糖じゃなくてはちみつを使うのにはバリスタの自然主義を感じます。
材料がわかっていても入れる順番が違うと別のドリンクができてしまうので注意。既に1回でも作ったことのあるものならゲーム内のスマホからレシピを確認可能で、初めて作るものを頼まれて試行錯誤する場合も1日毎に5回は作り直せます。
作成する時の演出も材料ごとに違っていて、カップにコーヒーなどを抽出する時の音やショウガなどを切る時のトントントン…という音も少し心地良いです。
作れるドリンクは全30種類。コーヒー×3でエスプレッソやコーヒー×2+ミルク×1でカフェラテなどよく知る商品名のものもあれば、コーヒー×2+しょうが×1でジャヒ・トゥブルックという日本人には聞き馴染みのないご当地コーヒー(これはインドネシア産らしい)ができたり、ミルク+シナモン+はちみつでベッドチャンバーというオリジナルのドリンクもできたりします。
ラテ系は出す直前にラテアートも描けます…が、チュートリアルや描き方講座とかがなく・単純に操作の癖が強いこともあって複雑な模様は描けませんでした。
ストーリー中に一度だけベイリース君にラテアートを注文されて頑張ったはいいものの上手く描けず苦笑された思い出はあるものの、「特定の模様を描いてくれ」といった注文はないのでオマケ要素。
ストーリーモードだと言われた通りの物を作れば大体喜んでくれる(グッドエンド突入のためにあえて頼まれたものとは違うものを作る場面も僅かにありますが)のでそんなに大変ではありません。セーブ&ロードを繰り返せば5回という制限もないようなものですし。
ただしチャレンジモードに挑む際は話が別で、時間制限がある上にとても細かい注文が飛んでくることもあって中々に難しいです。「さっぱり感ゼロ、控えめの苦味、強い甘み、ほっこり感のある飲み物」など細かく味を指定されるとパニックになるし、正解の基準もはっきりとはわからなくて注文通りに作れたと思ってもNGだったことが結構ありました…。
チャレンジモードはミニゲーム形式の本編とは独立したモードで、制限時間内にどれだけ正しい商品を出せたかを記録されるモードとなっています。正解数が多いほど制限時間も多く回復していく形式でスピードと正確性の両方が問われます。
1回のプレイで正解の商品を50杯出す「バリスタ尊師」という実績を狙う場合は複雑な注文が来ないように祈る必要もあって、運次第な部分も結構強いと思いました…。
客との会話が世界観を掴むための主な方法であるというのも独特だし、人間しかいない世界観だと扱いにくい差別問題がファンタジー種族ならではの問題としてカモフラージュされて出てくるせいで考えさせられる所も割と好きです。
続編の「ハイビスカス&バタフライ」も2023年に配信予定なので、発売されたらこちらも購入してみたいと思います。
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3月辺りにVA-11 Hall-A(ヴァルハラ)と本作でどちらを買おうか悩んでいた所に、本作がちょうどセールしていたので購入しました。遊んだのはSwitch版。
本作はヴァルハラのフォロワー作品。舞台がバーかカフェかという違いはあれど、どちらも店のマスターとして営業しつつ客の悩みを聞くという内容は一緒です。
本作のメインクリエーターであったモハメド・ファーミ氏は今年3月に32歳の若さで亡くなられたとの事。同氏のご冥福をお祈りします。
任天堂の公式オンラインストア。「コーヒートーク ダウンロード版」の販売ページ。マイニンテンドーストアではNintendo Switch(スイッチ)やゲームソフト、ストア限定、オリジナルの商品を販売しています。
内容の説明 『コーヒートーク』は、訪れる人々との会話を楽しみ、彼らの人生をかえるきっかけとなる、一杯のあたたかいコーヒーを提供する癒やしのゲームです。 あなたの店に訪れる、様々な事情をもつ登場人物たちに飲み物を提供して、彼らの持つ物語に耳を傾けてみましょう。 私たちが知っている世界とはちょっと異なる現代のシアトル。そこには人間以外にエルフやオークに人魚・・・。そして他の多くのファンタジー世界に登場する種族が一緒に暮らしています。プレイヤーは夜だけ営業している喫茶店『コーヒートーク』のマスターを演じます。 このゲームでは、人種的ステレオタイプや偏見など、文化の多様性を描く際に直面せざるをえない問題を「ファンタジー」という設定で表現しています。 エルフとサキュバスのドラマチックなラブストーリーから、人間を理解しようと試みる宇宙人、人狼と吸血鬼のコンビなど多様な別世界のシアトルの住人達の物語に入り込めば、同じような悩みを持つ私たちは、きっと彼らの世界に大いに共感できることでしょう。
心と心をかよわせる、
一杯のコーヒーからはじまるストーリー。
一杯のコーヒーからはじまるストーリー。
・タイトル:コーヒートーク
・発売元:
Toge Productions(Steam版) / コーラス・ワールドワイド(コンソール版)
・開発元:Toge Productions
・対応ハード:
PC(Steam)/Switch/PS4/XboxOne
・定価:
-Steam版:1320円(税込)
-Switch/PS4/XboxOne(パケ版):3980円(税込)
-Switch/PS4/XboxOne(DL版):1600円(税込)
・発売日:2020年1月30日
・ジャンル:
コーヒーをいれながら、心と心をかよわせるノベルゲーム
・CERO:B(12歳以上対象)
・プレイ人数:1人
・権利表記:
Coffee Talk ©2019-2020 Developed by Toge Productions. Published by Chorus Worldwide Games, all rights reserved.
・公式サイト:
https://chorusworldwide.com/coffee-talk-jp/
どういう人にオススメ?
・カフェのマスターとして色んな人の悩みを聞きたい人!
・オシャレなカフェの雰囲気を味わいたい人!
良かった点
・エルフやサキュバスなどが客として来るものの悩みが現実的で色々と考えさせられる
・夜のカフェならではの落ち着いた雰囲気とジャズのBGMが心地いい
・サーブできるドリンクも30種類と多く作るのが楽しい
賛否両論?点
・話の展開にもファンタジーを求めると物足りないかも
・チャレンジモードの注文が一部難しすぎる
備考
(当ブログの画像はSwitch本体の機能を用いて撮影)
・発売元:
Toge Productions(Steam版) / コーラス・ワールドワイド(コンソール版)
・開発元:Toge Productions
・対応ハード:
PC(Steam)/Switch/PS4/XboxOne
・定価:
-Steam版:1320円(税込)
-Switch/PS4/XboxOne(パケ版):3980円(税込)
-Switch/PS4/XboxOne(DL版):1600円(税込)
・発売日:2020年1月30日
・ジャンル:
コーヒーをいれながら、心と心をかよわせるノベルゲーム
・CERO:B(12歳以上対象)
・プレイ人数:1人
・権利表記:
Coffee Talk ©2019-2020 Developed by Toge Productions. Published by Chorus Worldwide Games, all rights reserved.
・公式サイト:
https://chorusworldwide.com/coffee-talk-jp/
どういう人にオススメ?
・カフェのマスターとして色んな人の悩みを聞きたい人!
・オシャレなカフェの雰囲気を味わいたい人!
良かった点
・エルフやサキュバスなどが客として来るものの悩みが現実的で色々と考えさせられる
・夜のカフェならではの落ち着いた雰囲気とジャズのBGMが心地いい
・サーブできるドリンクも30種類と多く作るのが楽しい
賛否両論?点
・話の展開にもファンタジーを求めると物足りないかも
・チャレンジモードの注文が一部難しすぎる
備考
(当ブログの画像はSwitch本体の機能を用いて撮影)
ファンタジー種族が暮らすシアトルのカフェが舞台

エルフなどの古典的なファンタジーに出てくる種族が現代の人間と同じように暮らしているシアトルに、主人公が経営するカフェ「コーヒートーク」は建っています。
主人公であるバリスタ(名前変更可能)が運営するこのカフェは夜のみの開店ということもあって、大繁盛しているとはいえず静かで落ち着いた雰囲気。やってくるのも顔なじみになる人達ばかりで客足は少ない方です。
巻き起こるイベントについても多少のアクシデントは起これど、急に銃撃戦が始まって避難したり戦いに行ったりすることはなく地味~な日常で進行していきます。派手さはないけれども深みは確かにある物語。
バリスタはプロローグからエンディングまでカフェの外に出ることが一切ありません。なのでこの世界の情勢を知るには客の話に耳を傾けるか・一日の初めに読める新聞記事から推察することになります。
出てくる登場人物の大半が人間とは違う種族ではありますが、実際に描かれるのは現実世界とそこまで変わらない地に足着いた世界。
ファンタジーの種族が現代社会を作り上げたらどうなる?という思考実験を再現したものではないので生活そのものは我々の世界とそう変わりませんし、カフェ内で繰り広げられる話題も一部を除いて良くも悪くも「現代社会にありがち」な悩みばかり。
エルフとサキュバスのカップルの話は人間同士でもお互いの家柄や人種による価値観の違いへ置き換える事ができるし、世間からの目が厳しい人狼という種族の話に至ってはそのまま有色人種やマイノリティの人達への差別問題に置き換えられます。
見た目こそファンタジー種族に入れ替えられてマイルドになっているとはいえ、話の内容そのものはストレートにナイーブかつ根深い問題を扱っているので、読んでいて考えさせられるものが多かったように感じました。
日本に住んでいると他人種やマイノリティの人への差別は(正直に言ってしまうと)あまり馴染みがない問題で近年のグローバル化によって少しずつ国内でも騒がれるようになったという印象ですが、一旦海外へ踏み出すと古くから側に存在する問題であるだけに悩んでいる人もとても多いのだと思われます。
このような世相を反映した結果生まれたのが本作に出てくる悩めるキャラクター達だったと考えられますが、個人的にはむしろ人間しかいない社会でも差別が存在するという皮肉を混じえてあえてファンタジーの世界で同様の問題を描いたのかな…とも考えてしまいました。
当事者でもない日本人の私がどうこう言える立場ではないのですが、悩んでいる人がいる事実はノンフィクションだと思うと少しドキッとしてしまいました…。それでも作中の当事者達は本人なりの折り合いを付けてくれるのがこちらにとっても救いかもしれません。
ゲーム内時間で14日経つとエンディングを迎え、メインストーリー1周は3時間あれば終わるのでボリュームは控えめ。サクッと遊べるノベルゲームを探している人にはちょうどいいかも。
ここからはやってくるお客様について簡単に紹介します。最初に来るのはフレイヤという人間の女性ライターで、彼女は小説を書くための書斎兼インスピレーションを得る場所としてカフェへ連日訪れてくれるお得意様です。
ゲーム内スマホからは実際に彼女が書いた短編小説を読むこともできます。ストーリーが進むと小説の方も更新されていくのですが、ここから彼女が他の客の問題をどう捉えているか少しだけわかるようになっています。
人間のお客にはもう1人巡査官のジョルジというおじさんもいて、こちらもお得意様と言えます(ただしミルクアレルギー)。彼はどちらかというと他の客にアドバイスを与える立場であることが多かったです。
他の種族のお客さんは、相思相愛ながらも家族が恋人を認めてくれないことに苦悩するエルフのベイリースとサキュバスのルアの異種間カップル、世間から羨望の眼差しを向けられているバンパイヤのハイドと種族柄肩身の狭い立場である人狼のガラのタッグ、大手ゲーム開発会社で働くオークのマートルとインディゲーム開発をしている人魚のアクアが出会ったり、アイドルとして活躍しているネコミミ娘のレイチェルと娘との距離感を掴めないでいる父親のヘンドリー、果てには他の星からお相手を探しに来た宇宙人のニールまで来ます。
こうして羅列すると結構な数の登場人物がいますが、どの客も個性的なビジュアルと悩みを持っているので覚えるのは難しくないし・同時に会話に入ってくるのは多くても3〜4人なので特定の問題だけに集中できる仕様です。
バリスタはあくまでも傍観者で実際に悩みを解決するのは本人や他の客からのアドバイスなのは一貫しています。特定の場面で特定のドリンクを出すと結末が分岐する要素もあるので多少は手助けしているとも言えますが、根本的な部分は完全に本人任せ。
そんなバリスタ自身の種族も気にならなくもない部分ですが、一応最後の最後でなんとなーく考察の余地がある程度にぼかされながらも明かされます。2周目からは皆のセリフが多少変わる他にバリスタが勝手に口を滑らせてタイムルーパーだとバレそうになる(ネタバレ)部分もあります。
繰り広げられる話について、記事の上の方で「一部を除いて良くも悪くも「現代社会にありがち」な悩みばかり」と記載しましたが、ここで除いている一部がニール関連の話です。彼は宇宙人ということもあってやることなすことが全てトンチンカンなので他の客とは一線を介して現実離れしています。
でもニールはただ無知可愛いコメディリリーフというだけではなく、作中でも特殊な存在として目立つことで他の話の現実味を強くするための役割も担っているのかなとも思いました。そういう立場のキャラは印象に残りやすいのもあって個人的には結構好き。
しかも、エピローグにてイケメンドクターの姿で現れて主人公の同類であることをバラしてきます。そういう意味では超がつくほど重要人物なので目立っていた理由もわからなくないです。
纏めると、公共の場で他人の会話に聞き耳を立てて聞いてしまうような人には向いている一方で、大量のファンタジー要素や壮大な物語を期待している人には向いていない作品です。言ってしまえば好き嫌いが人によって大きく分かれます。
ただハッキリ言えるのは、雰囲気も終始落ち着いているし・BGMもカフェで流れているようなジャズ風味の心地よいものとなっていて、こちらもコーヒーを飲みながら遊ぶには最適のゲームということ。私はコーヒーが飲めないのでペットボトルの午後の紅茶を飲みながらのプレイでしたが…。
前述の通り複雑な事情の話題や性的な内容も少しあるので、コーヒーが飲める年齢になってからプレイしましょうという感じのゲームです。
作れるドリンクは全部で30種類

カフェのマスターという立場である以上、ただ話を聞いて終わりではなく注文されたドリンクを作って提供することができます。
注文の形式は色んなパターンがあり、目的のドリンクに何が入っているかをヒントとして教えてくれることもあれば・名前だけ伝えられて作ってみろと言わんばかりの注文もあったり・常連客恒例の「いつもの」を注文されたり…等々。
作る時はベースをコーヒー・紅茶・抹茶・ココア・ミルクから1つ、フレーバーをコーヒー・紅茶・抹茶・ココア・ミルク・レモン・ミント・しょうが・シナモン・はちみつから2つ選ぶだけで作れます。それ以外の操作はいらない簡単レシピ。
各材料はほっこり感・さっぱり感・甘み・苦味といった味のステータスも持っているので、もし味の指定があればそこもこだわる感じ。甘みを追加するのに砂糖じゃなくてはちみつを使うのにはバリスタの自然主義を感じます。
材料がわかっていても入れる順番が違うと別のドリンクができてしまうので注意。既に1回でも作ったことのあるものならゲーム内のスマホからレシピを確認可能で、初めて作るものを頼まれて試行錯誤する場合も1日毎に5回は作り直せます。
作成する時の演出も材料ごとに違っていて、カップにコーヒーなどを抽出する時の音やショウガなどを切る時のトントントン…という音も少し心地良いです。
作れるドリンクは全30種類。コーヒー×3でエスプレッソやコーヒー×2+ミルク×1でカフェラテなどよく知る商品名のものもあれば、コーヒー×2+しょうが×1でジャヒ・トゥブルックという日本人には聞き馴染みのないご当地コーヒー(これはインドネシア産らしい)ができたり、ミルク+シナモン+はちみつでベッドチャンバーというオリジナルのドリンクもできたりします。
ラテ系は出す直前にラテアートも描けます…が、チュートリアルや描き方講座とかがなく・単純に操作の癖が強いこともあって複雑な模様は描けませんでした。
ストーリー中に一度だけベイリース君にラテアートを注文されて頑張ったはいいものの上手く描けず苦笑された思い出はあるものの、「特定の模様を描いてくれ」といった注文はないのでオマケ要素。
ストーリーモードだと言われた通りの物を作れば大体喜んでくれる(グッドエンド突入のためにあえて頼まれたものとは違うものを作る場面も僅かにありますが)のでそんなに大変ではありません。セーブ&ロードを繰り返せば5回という制限もないようなものですし。
ただしチャレンジモードに挑む際は話が別で、時間制限がある上にとても細かい注文が飛んでくることもあって中々に難しいです。「さっぱり感ゼロ、控えめの苦味、強い甘み、ほっこり感のある飲み物」など細かく味を指定されるとパニックになるし、正解の基準もはっきりとはわからなくて注文通りに作れたと思ってもNGだったことが結構ありました…。
チャレンジモードはミニゲーム形式の本編とは独立したモードで、制限時間内にどれだけ正しい商品を出せたかを記録されるモードとなっています。正解数が多いほど制限時間も多く回復していく形式でスピードと正確性の両方が問われます。
1回のプレイで正解の商品を50杯出す「バリスタ尊師」という実績を狙う場合は複雑な注文が来ないように祈る必要もあって、運次第な部分も結構強いと思いました…。
総評:カフェの中で織り成すリアルな人間ドラマが魅力的な作品
最初から最後まで注文通りの商品を作りつつ客の話を聞くだけなので、悪く言えば地味・良く言えば落ち着いた雰囲気の作品。客との会話が世界観を掴むための主な方法であるというのも独特だし、人間しかいない世界観だと扱いにくい差別問題がファンタジー種族ならではの問題としてカモフラージュされて出てくるせいで考えさせられる所も割と好きです。
続編の「ハイビスカス&バタフライ」も2023年に配信予定なので、発売されたらこちらも購入してみたいと思います。
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