【いっせいトライアル】『Eastward』を遊んだ感想&レビュー【クリア済】
2023年10月のいっせいトライアルで『Eastward(イーストワード)』を遊んだ感想です。

発売当時にドット絵の描き込みが凄いゲームとして少し話題になっていたのを覚えています。でも個人的にはアイコンの絵柄に惹かれなかったのを理由にスルーした思い出…。
いっせいトライアル期間中に記事を書くことは叶いませんでしたが、製品版は10月22日まで1400円(50%off)でセール中なので今からでも興味のある方は是非。今までで一番の最安値です。
17時間程度でエンディングに到達。良い意味でも悪い意味でもインディーらしさが爆発していると思った作品です。

本作の主人公は髭もじゃおじさんのジョンと白髪超ロング少女の珊(サン)の2人。珊が柵に見えていてしばらくの間はサクちゃんだと思ってました…。
ジョンは寡黙で台詞を一切喋りません(メタ的にだけでなくゲーム内でも無口との事)がフライパンで料理も戦闘もできる器用なおじさん、珊は行動も性格も子どもらしく可愛いけれども不思議な力を持っていて出自も謎に満ちています。イラストの珊ちゃんは絵柄のせいで男の子にも見えなくもないのですが、ゲーム内で動いて喋っている様子を見ると間違いなく女の子です。
2人の出会いはオープニングムービーにて語られてゲーム開始時には既に一緒に暮らしている状態からスタート、第1章が終わるまでは大穴の中にあるポットクロック島という町の中で過ごして、その後は地上へ出て線路が続く東の果てを目指す大冒険が始まります。タイトルのeastwardは「東の方(へ)」という意味の単語でして、実際にジョン達はストーリーの進行に合わせて街を転々としながら少しずつ東へ向かっていきます。
一度離れた町については無事であってもなくても再度訪れることはできなくなってしまい、宝箱なども取得できなくなってしまうので探索は適宜しっかりやっておく事をオススメします。一応エンディングを見た後にはチャプターセレクトが解禁されて、既存のデータからステータスを引き継いで回収作業ができるようになるので完全に取り返しがつかなくなる事にはなりません。
ここからが本作の推しポイントなのですが、本作の世界は超がつくほど緻密に描き込まれたドット絵で絵描かれています。ドット絵のゲーム自体はインディーゲームでは少なくもないのですが、本作はその中でも頭一つ抜けているレベルで描き込まれています。
壁の凹凸や汚れ・落ちているゴミ・その辺の雑草といったディティールに至るまで描写されていて、見ているだけでもその世界での生活がどんなものなのかが何となく伝わってきます。陰影や背景のアニメーションはプログラム制御も組み合わせて表現しているとの事で、最新鋭のドット絵というのはこういう物なのかもと思ったり。
点でできているはずなのに凄くナチュラルに見える世界は真に見応えアリ。ハイポリゴンによって描写されるフォトリアルな世界とはまた違った現実味があって、本作を遊んだ人のほとんどがグラフィックについて褒めているのにも納得できるクオリティです。
また、町ごとに景色が大きく変わるおかげで新しい場所に着く度に一から探索し直すのも楽しかったです。小麦畑が広がる自然豊かな農村、ごちゃごちゃアジアンな街、雪が積もった西洋風の街…その全てが繊細に描かれているのが最高です。
もちろんキャラクターもドット絵で描かれているのですが、その動きについてもとても滑らか。珊ちゃんは幼い少女らしさがあって可愛いし、ジョンが面倒くさそうに頭をかくのもリアルなおっさん感があるし、嫌なヤツはその挙動一つ一つがムカつくしで、メインキャラからモブキャラまで動きだけで性格が十分に伝わってきます。
しかし、このグラフィックおよびアニメーションの細さがゲーム全体のテンポの低下を招いている原因にもなっているようにも思えます。本作には文章を読んでいく場面がかなり多く存在しているのですが、会話が始まる前にも途中にもキャラや物体が動くシーンが頻繁に挟まるせいで1つの会話シーンを見終えるだけでも時間がかかりがちで冗長に感じてしまいました。
作りこんだアニメーションを見て欲しいという事でこういう作りになっているのだとは思うのですが、あまり興味が湧かないイベントやキャラクターの話をしている時はこの待ち時間が結構辛くなってきます。グラフィックは綺麗だけど操作不可のムービーが頻繁に挿入されるゲームがムービーゲーと言われることがありますが、本作は正しくドット絵で作られたムービーゲーだと思いました。
個人的にゲームはプレイヤーが動かしてなんぼだと考えているのもあって、そこまで重要ではないイベントですら操作できるまでに時間がかかる仕様は少々しんどかったです。体感ではプレイ時間の1/3〜1/2がイベントを見ているシーンだった気がします。
また、エラーによるソフトの強制終了が数回発生したのも気になった部分です。頻繁にオートセーブしてくれるのでロールバックした所で被害がそこまで大きくないのが救いですが、よりにもよってラスボスを倒した直後に落ちてボス戦からやり直しになった時はかなり萎えました…。
再度やり直した時には落ちること無くイベントが進んだので、定期的にソフトを再起動することで大事な所でのエラー落ちを防げるかもしれません。ここに関してはシンプルに最適化を頑張って欲しかったとしか言いようがないです。
世界観は独特で、ポストアポカリプス後に再復興した街に人間とロボットが一緒に暮らしているみたいな感じで未来感もあるしレトロ感もある世界です。全体的な雰囲気はMOTHERシリーズっぽいのですが、街の景色や船や列車など機械全般のデザインにどことなくジブリの面影を感じます。
珊ちゃんの可愛さで少し誤魔化されている気がしますが、ストーリーは結構ダーク。ジョン達が出会う人々の中には救われる事無くいなくなってしまう人が何人もいますし、タタリという触れるだけで人を死なせたり町を崩壊させるモヤモヤが色んな場所に現れていて世界全体が結構ピンチな状況です。
個人的にはストーリーには微妙と思う所が結構あったように感じます。明るい展開ではないからスッキリしないのもありますが、それとは別にここについてもうちょっと詳しく…と思う所が少なくなかったです。
初登場時はただの変なモブかと思っていたキャラがいつの間にか超重要キャラになっていたり、出会ったばかりのキャラが突然にジョンに恋心を寄せてきたりして「もしかして村ぐるみのハニートラップなのでは…」と思ったら別にそんな事は無かったりと、何この急展開!?と思った所もいくつかありました。アルヴァとイザベルの関係性もよく分からなかったし…。
一番気になっていた珊ちゃんの正体についても結局ハッキリとは語られませんでしたが、これに関しては珊にとってもジョンにとっても知るよしがない情報という事で、彼女らを操作しているプレイヤーにもあえて開示しないという演出としてはアリかもと思いました。それ以上にソロモンの方が謎すぎて…彼の口から真相を直接聞けるとかでこの世界の謎を明かしてくれても良かったのに、そういうのもなくて終始鬱陶しいだけの邪魔キャラという印象しかなかったです。
正直、第3章でマフィアのボスとの正味どうでもいい料理対決を結構な時間をかけて展開する暇があるなら、他にもっと詳しく描いて欲しい所があったのにな…と思ってしまいました。この第3章についてはせっかく手に入れたグラスの実をダニエルとウィリアムに渡さないといけない意味も分からなかったし、彼らは後ほど移動を手伝ってくれるとはいえ「あの時のお礼として手伝うよ」感は無くて行きたい所が同じだったから流れで一緒に行動する事になった感じでしたし、何よりも珊ちゃんの優しさを良いように利用された感が許せなくて本作一番の胸糞ポイントでもありました。

色々あってジョン達はモンスターがウヨウヨいる危険な場所にも出向くことに。街の外ではジョンと珊の2人をZRで切り替えながらモンスターと戦ったり・パズルを解いたりしながら進みます。
2人はそれぞれできる事が違っていて、ジョンはフライパンの他に銃や火炎放射器をメインウェポンとして使えたり・爆弾を設置したり・重い箱や本棚を引っ張ったりできて、珊の方は敵を動けなくしたり邪魔な花やタタリを消すエネルギー球を出したり・小さいトンネルを通ってジョンが行けない場所を進んでいけます。一部の敵を除くとダメージを与えられるのはジョンの方だけですが、ゲームが進むにつれて隙が少なくノックバックもほぼしない嫌らしい性能の敵が増えていくため珊のエネルギー弾による足止めも活用しないと安全に倒すのが難しくなってきます。
でも本作は戦闘よりも謎解きの方がメインでして、ジョンが爆弾に溜め攻撃をぶつけて吹っ飛ばすことで遠くにあるスイッチを押したり・2人の分担作業で解いていくパズルというのが多め。2人で解くパズルはお互いに信頼している感があってシチュエーション的に結構好きでした。
ただ、出てくるギミックの種類はそこまで多くなく解き方も同じパターンのものが何回も出てきて単調ではありました。爆弾の種類が増えてもフライパンでホームランして飛ばすという使い方は同じなのでそこまで変わり映えせず、珊ちゃんの能力もほぼエネルギーボールしか出番が無かったので、2Dゼルダがインスピレーション元っぽいしアイテムや謎解きのバリエーションがもっと多くても良かったのよと思いました。
一応、誰かの依頼という形でミニゲームが始まったり・第6章辺りでステルスアクションが入ったりとゲームとしての志向を変えてくる場面もあるにはあります。でもそれも2〜3章に1個あるかないかぐらいで、ジャンルがコロコロ変わるという感じではないです。
グラフィックやおまけコンテンツにコストというか熱意を取られている感じも正直あって、おまけの方に力を入れたいからメインはこのぐらいでいいや…という気持ちが少なからずあったように見受けられます(グラフィック等に力が入り過ぎているからこそ相対的にそう見えてしまうというのもあるのですが)。逆に作り手が好きな所にとても熱い情熱を注いでいるのがハッキリわかるという意味ではインディーらしい作品だとも思いました。
ころりん回避やガードができないのに加えて操作していない方に攻撃が当たってもダメージを受けてしまうので、どうしても被弾は多くなりがち。ゲームオーバーになっても同じ部屋の入口からやり直しになるだけでデスぺナルティは全くキツくないですが、無償で回復できる機会は多くないので回復用の料理が大事になってきます。
ジョンはとりあえずコンロと材料さえあれば料理を作れちゃいます。ダンジョンの中にも何故かコンロが用意されている場所があるので準備できる機会は多め。

食材は敵を倒すと時折ドロップするものを集めるか、お店で売っているものを買うことで入手可能。3つの食材+お好みの調味料を1つを組み合わせることで何かしらの料理が出来上がります。
料理はアイテムインベントリに入っていつでも食べることができます。オマケで調理前のスロットにてマークが2~3個揃うと効果がアップします。
用意されているレシピは30種類以上。材料を3つ選んだ時点で出来上がるものを事前に教えてくれるので材料の消費無しで試行錯誤できますが、特定の場所・特定の章でしか手に入らない食材というのが結構多いのでコンプリートは難しめ。
個人的に料理を作れるゲームが好きなので、本作の料理も色々作っていて楽しかったです。コンプリートまではできなかったけど…。
それ以外に、本作にはもう1つメインコンテンツと言えるものが存在しています。それがゲーム内ゲームの「大地の子」。

大地の子は7日間という限られた時間内に準備を整えて魔王を倒すのが目標のドラクエ風RPGです。メインストーリーを進める上ではチュートリアルでプレイする1回目を除けば以降遊ばなくてもOK…なのですが、無視するには勿体ないぐらい作り込まれています。
主人公の「きし」が死んでしまうとゲームオーバーで最初からやり直しになってしまうRPGとしては結構厳しいシステム。ただし既に仲間にしたメンバーと解放したポータルは引き継ぐので完全に無に帰すわけでは無いです。
また、ゲーム開始時にキャラクターの性能がランダムで変わるのも特徴。調べてみた所「しょうにん」と「モンキ」は性能固定・他キャラは2~3パターンから1つ選ばれる形式になっているとの事で、キャラ性能に合わせて作戦を毎回考えないといけなくてプレイ感も少し変わってくるというローグライク的な要素も含まれています。
初めて魔王を倒すまでは前座でしかなく、実は2周目以降が本番です。1周目は仲間と装備を集めてレベルを上げとけば普通にクリアできるのに対して、2周目からは「やみの4しょうぐん」という中ボスを撃破した上で魔王を倒さないといけなくなるので時間的にも難易度的にも急激にシビアに。
でも大地の子にはちょっとした裏技というか救済措置が存在します。それがピクスボールというガチャポンです。

大地の子の筐体の横に置かれていることが多いこのピクスボールですが、ここでゲットしたフィギュアの所持個数に合わせて大地の子内で使えるアイテムが支給されるというボーナスが存在します。現実でいうamiiboみたいな感じのグッズです。
例として、スライムのピクスボールは味方全員のHPを回復する「たいりょくサプリ」、マッドラッドのピクスボールは封鎖された場所を解放できる「まほうのかぎ」に変換されます。何気に凄く便利なアイテムも貰えるのであるのとないのでは難易度も変わってきますし、大地の子が難しいな…と思ったらまずはピクスボール集めをやるのをオススメします。
ピクスボールを回すためのトークン集めが結構大変なのですが、第7章の街中に塩(通貨)でトークンを売ってくれるロボットがいるので本格的に大地の子攻略に手を出すのはそこからでもいいかもしれません。ただし大地の子1周目をクリアすると高レア群のフィギュアが追加されるので、1周目だけは早めにクリアしておくのがオススメです。
ぶっちゃけな話、ゲームとしては本編よりも大地の子の方が面白いと思いました。ローグライク要素を取り入れたドラクエ風RPGというありそうでなかったゲーム性になっているのもあって、本編そっちのけでハマってしまう人も結構多そう。
超が付くほど緻密に描き込まれたドット絵もですが、ジブリっぽくもMOTHERっぽくも感じる雰囲気・2Dゼルダ風のダンジョン攻略パート・作中作にもかかわらず作り込まれたドラクエ風RPG「大地の子」・フィギュアが出てくるガチャポンなど、作り手が好きな物や作りたい物を詰め込めるだけ詰め込んだ作品であるようにも感じられました。しかしその代償か手が回っていないようにも感じる所が少なからずあって、それがメインストーリーを進めていると嫌でも目立つ所に集中しているのが微妙と感じた所です。
プレイヤー側がゲームに何を求めているかによって感想や評価が大きく変わってきてしまう作品というのが私が出した結論です。ドット絵アートや風変わりな世界観を求めるなら◎ですが、操作していて楽しいゲームを求めるなら×ぐらいにはなってしまうかも。
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発売当時にドット絵の描き込みが凄いゲームとして少し話題になっていたのを覚えています。でも個人的にはアイコンの絵柄に惹かれなかったのを理由にスルーした思い出…。
いっせいトライアル期間中に記事を書くことは叶いませんでしたが、製品版は10月22日まで1400円(50%off)でセール中なので今からでも興味のある方は是非。今までで一番の最安値です。
17時間程度でエンディングに到達。良い意味でも悪い意味でもインディーらしさが爆発していると思った作品です。
任天堂の公式オンラインストア。「Eastward(イーストワード) ダウンロード版」の販売ページ。マイニンテンドーストアではNintendo Switch(スイッチ)やゲームソフト、ストア限定、オリジナルの商品を販売しています。
『Eastward』の世界へようこそ!(人口は減っているけれど&)崩壊しつつある世界を冒険して、美しい町や変わった生物、それよりもっと変わった人々を見つけよう。ジョンのフライパンと珊の神秘的な力を駆使して、未知なる旅へ出発しよう&。
・タイトル:Eastward
・発売元:Chucklefish
・開発元:Pixpil
・対応ハード:
PC(Steam)/Switch/XboxOne/XboxX|S
・定価:2800円(税込)
・発売日:
-Steam/Switch版:2021年9月16日
-Xbox版:2022年12月1日
・ジャンル:アクションアドベンチャー
・CERO:B(12歳以上対象)
・プレイ人数:1人
・権利表記:
Pixpil Games © 2021. Published by Chucklefish Games.
・公式サイト:
https://eastwardgame.com/ja/
どういう人にオススメ?
・ドット絵のゲームが好きな人!
良かった点
・描き込まれたドット絵がとにかく凄い
・食材を組み合わせて料理を作れるのが楽しい
・作中作の「大地の子」がかなり面白い
賛否両論?点
・エラー落ちが結構な頻度で発生する(Switch版のみ?)
・ストーリーの一部が超展開
・メイン部分のゲーム性がちょっと単調
備考
(当ブログの画像はSwitch本体の機能を用いて撮影)
・発売元:Chucklefish
・開発元:Pixpil
・対応ハード:
PC(Steam)/Switch/XboxOne/XboxX|S
・定価:2800円(税込)
・発売日:
-Steam/Switch版:2021年9月16日
-Xbox版:2022年12月1日
・ジャンル:アクションアドベンチャー
・CERO:B(12歳以上対象)
・プレイ人数:1人
・権利表記:
Pixpil Games © 2021. Published by Chucklefish Games.
・公式サイト:
https://eastwardgame.com/ja/
どういう人にオススメ?
・ドット絵のゲームが好きな人!
良かった点
・描き込まれたドット絵がとにかく凄い
・食材を組み合わせて料理を作れるのが楽しい
・作中作の「大地の子」がかなり面白い
賛否両論?点
・エラー落ちが結構な頻度で発生する(Switch版のみ?)
・ストーリーの一部が超展開
・メイン部分のゲーム性がちょっと単調
備考
(当ブログの画像はSwitch本体の機能を用いて撮影)
ジョンと珊が東の果てを目指す物語

本作の主人公は髭もじゃおじさんのジョンと白髪超ロング少女の珊(サン)の2人。珊が柵に見えていてしばらくの間はサクちゃんだと思ってました…。
ジョンは寡黙で台詞を一切喋りません(メタ的にだけでなくゲーム内でも無口との事)がフライパンで料理も戦闘もできる器用なおじさん、珊は行動も性格も子どもらしく可愛いけれども不思議な力を持っていて出自も謎に満ちています。イラストの珊ちゃんは絵柄のせいで男の子にも見えなくもないのですが、ゲーム内で動いて喋っている様子を見ると間違いなく女の子です。
2人の出会いはオープニングムービーにて語られてゲーム開始時には既に一緒に暮らしている状態からスタート、第1章が終わるまでは大穴の中にあるポットクロック島という町の中で過ごして、その後は地上へ出て線路が続く東の果てを目指す大冒険が始まります。タイトルのeastwardは「東の方(へ)」という意味の単語でして、実際にジョン達はストーリーの進行に合わせて街を転々としながら少しずつ東へ向かっていきます。
一度離れた町については無事であってもなくても再度訪れることはできなくなってしまい、宝箱なども取得できなくなってしまうので探索は適宜しっかりやっておく事をオススメします。一応エンディングを見た後にはチャプターセレクトが解禁されて、既存のデータからステータスを引き継いで回収作業ができるようになるので完全に取り返しがつかなくなる事にはなりません。
ここからが本作の推しポイントなのですが、本作の世界は超がつくほど緻密に描き込まれたドット絵で絵描かれています。ドット絵のゲーム自体はインディーゲームでは少なくもないのですが、本作はその中でも頭一つ抜けているレベルで描き込まれています。
壁の凹凸や汚れ・落ちているゴミ・その辺の雑草といったディティールに至るまで描写されていて、見ているだけでもその世界での生活がどんなものなのかが何となく伝わってきます。陰影や背景のアニメーションはプログラム制御も組み合わせて表現しているとの事で、最新鋭のドット絵というのはこういう物なのかもと思ったり。
点でできているはずなのに凄くナチュラルに見える世界は真に見応えアリ。ハイポリゴンによって描写されるフォトリアルな世界とはまた違った現実味があって、本作を遊んだ人のほとんどがグラフィックについて褒めているのにも納得できるクオリティです。
また、町ごとに景色が大きく変わるおかげで新しい場所に着く度に一から探索し直すのも楽しかったです。小麦畑が広がる自然豊かな農村、ごちゃごちゃアジアンな街、雪が積もった西洋風の街…その全てが繊細に描かれているのが最高です。
もちろんキャラクターもドット絵で描かれているのですが、その動きについてもとても滑らか。珊ちゃんは幼い少女らしさがあって可愛いし、ジョンが面倒くさそうに頭をかくのもリアルなおっさん感があるし、嫌なヤツはその挙動一つ一つがムカつくしで、メインキャラからモブキャラまで動きだけで性格が十分に伝わってきます。
しかし、このグラフィックおよびアニメーションの細さがゲーム全体のテンポの低下を招いている原因にもなっているようにも思えます。本作には文章を読んでいく場面がかなり多く存在しているのですが、会話が始まる前にも途中にもキャラや物体が動くシーンが頻繁に挟まるせいで1つの会話シーンを見終えるだけでも時間がかかりがちで冗長に感じてしまいました。
作りこんだアニメーションを見て欲しいという事でこういう作りになっているのだとは思うのですが、あまり興味が湧かないイベントやキャラクターの話をしている時はこの待ち時間が結構辛くなってきます。グラフィックは綺麗だけど操作不可のムービーが頻繁に挿入されるゲームがムービーゲーと言われることがありますが、本作は正しくドット絵で作られたムービーゲーだと思いました。
個人的にゲームはプレイヤーが動かしてなんぼだと考えているのもあって、そこまで重要ではないイベントですら操作できるまでに時間がかかる仕様は少々しんどかったです。体感ではプレイ時間の1/3〜1/2がイベントを見ているシーンだった気がします。
また、エラーによるソフトの強制終了が数回発生したのも気になった部分です。頻繁にオートセーブしてくれるのでロールバックした所で被害がそこまで大きくないのが救いですが、よりにもよってラスボスを倒した直後に落ちてボス戦からやり直しになった時はかなり萎えました…。
再度やり直した時には落ちること無くイベントが進んだので、定期的にソフトを再起動することで大事な所でのエラー落ちを防げるかもしれません。ここに関してはシンプルに最適化を頑張って欲しかったとしか言いようがないです。
世界観は独特で、ポストアポカリプス後に再復興した街に人間とロボットが一緒に暮らしているみたいな感じで未来感もあるしレトロ感もある世界です。全体的な雰囲気はMOTHERシリーズっぽいのですが、街の景色や船や列車など機械全般のデザインにどことなくジブリの面影を感じます。
珊ちゃんの可愛さで少し誤魔化されている気がしますが、ストーリーは結構ダーク。ジョン達が出会う人々の中には救われる事無くいなくなってしまう人が何人もいますし、タタリという触れるだけで人を死なせたり町を崩壊させるモヤモヤが色んな場所に現れていて世界全体が結構ピンチな状況です。
個人的にはストーリーには微妙と思う所が結構あったように感じます。明るい展開ではないからスッキリしないのもありますが、それとは別にここについてもうちょっと詳しく…と思う所が少なくなかったです。
初登場時はただの変なモブかと思っていたキャラがいつの間にか超重要キャラになっていたり、出会ったばかりのキャラが突然にジョンに恋心を寄せてきたりして「もしかして村ぐるみのハニートラップなのでは…」と思ったら別にそんな事は無かったりと、何この急展開!?と思った所もいくつかありました。アルヴァとイザベルの関係性もよく分からなかったし…。
一番気になっていた珊ちゃんの正体についても結局ハッキリとは語られませんでしたが、これに関しては珊にとってもジョンにとっても知るよしがない情報という事で、彼女らを操作しているプレイヤーにもあえて開示しないという演出としてはアリかもと思いました。それ以上にソロモンの方が謎すぎて…彼の口から真相を直接聞けるとかでこの世界の謎を明かしてくれても良かったのに、そういうのもなくて終始鬱陶しいだけの邪魔キャラという印象しかなかったです。
正直、第3章でマフィアのボスとの
アクションパート以外に寄り道要素もいくつか

色々あってジョン達はモンスターがウヨウヨいる危険な場所にも出向くことに。街の外ではジョンと珊の2人をZRで切り替えながらモンスターと戦ったり・パズルを解いたりしながら進みます。
2人はそれぞれできる事が違っていて、ジョンはフライパンの他に銃や火炎放射器をメインウェポンとして使えたり・爆弾を設置したり・重い箱や本棚を引っ張ったりできて、珊の方は敵を動けなくしたり邪魔な花やタタリを消すエネルギー球を出したり・小さいトンネルを通ってジョンが行けない場所を進んでいけます。一部の敵を除くとダメージを与えられるのはジョンの方だけですが、ゲームが進むにつれて隙が少なくノックバックもほぼしない嫌らしい性能の敵が増えていくため珊のエネルギー弾による足止めも活用しないと安全に倒すのが難しくなってきます。
でも本作は戦闘よりも謎解きの方がメインでして、ジョンが爆弾に溜め攻撃をぶつけて吹っ飛ばすことで遠くにあるスイッチを押したり・2人の分担作業で解いていくパズルというのが多め。2人で解くパズルはお互いに信頼している感があってシチュエーション的に結構好きでした。
ただ、出てくるギミックの種類はそこまで多くなく解き方も同じパターンのものが何回も出てきて単調ではありました。爆弾の種類が増えてもフライパンでホームランして飛ばすという使い方は同じなのでそこまで変わり映えせず、珊ちゃんの能力もほぼエネルギーボールしか出番が無かったので、2Dゼルダがインスピレーション元っぽいしアイテムや謎解きのバリエーションがもっと多くても良かったのよと思いました。
一応、誰かの依頼という形でミニゲームが始まったり・第6章辺りでステルスアクションが入ったりとゲームとしての志向を変えてくる場面もあるにはあります。でもそれも2〜3章に1個あるかないかぐらいで、ジャンルがコロコロ変わるという感じではないです。
グラフィックやおまけコンテンツにコストというか熱意を取られている感じも正直あって、おまけの方に力を入れたいからメインはこのぐらいでいいや…という気持ちが少なからずあったように見受けられます(グラフィック等に力が入り過ぎているからこそ相対的にそう見えてしまうというのもあるのですが)。逆に作り手が好きな所にとても熱い情熱を注いでいるのがハッキリわかるという意味ではインディーらしい作品だとも思いました。
ころりん回避やガードができないのに加えて操作していない方に攻撃が当たってもダメージを受けてしまうので、どうしても被弾は多くなりがち。ゲームオーバーになっても同じ部屋の入口からやり直しになるだけでデスぺナルティは全くキツくないですが、無償で回復できる機会は多くないので回復用の料理が大事になってきます。
ジョンはとりあえずコンロと材料さえあれば料理を作れちゃいます。ダンジョンの中にも何故かコンロが用意されている場所があるので準備できる機会は多め。

食材は敵を倒すと時折ドロップするものを集めるか、お店で売っているものを買うことで入手可能。3つの食材+お好みの調味料を1つを組み合わせることで何かしらの料理が出来上がります。
料理はアイテムインベントリに入っていつでも食べることができます。オマケで調理前のスロットにてマークが2~3個揃うと効果がアップします。
用意されているレシピは30種類以上。材料を3つ選んだ時点で出来上がるものを事前に教えてくれるので材料の消費無しで試行錯誤できますが、特定の場所・特定の章でしか手に入らない食材というのが結構多いのでコンプリートは難しめ。
個人的に料理を作れるゲームが好きなので、本作の料理も色々作っていて楽しかったです。コンプリートまではできなかったけど…。
それ以外に、本作にはもう1つメインコンテンツと言えるものが存在しています。それがゲーム内ゲームの「大地の子」。

大地の子は7日間という限られた時間内に準備を整えて魔王を倒すのが目標のドラクエ風RPGです。メインストーリーを進める上ではチュートリアルでプレイする1回目を除けば以降遊ばなくてもOK…なのですが、無視するには勿体ないぐらい作り込まれています。
主人公の「きし」が死んでしまうとゲームオーバーで最初からやり直しになってしまうRPGとしては結構厳しいシステム。ただし既に仲間にしたメンバーと解放したポータルは引き継ぐので完全に無に帰すわけでは無いです。
また、ゲーム開始時にキャラクターの性能がランダムで変わるのも特徴。調べてみた所「しょうにん」と「モンキ」は性能固定・他キャラは2~3パターンから1つ選ばれる形式になっているとの事で、キャラ性能に合わせて作戦を毎回考えないといけなくてプレイ感も少し変わってくるというローグライク的な要素も含まれています。
初めて魔王を倒すまでは前座でしかなく、実は2周目以降が本番です。1周目は仲間と装備を集めてレベルを上げとけば普通にクリアできるのに対して、2周目からは「やみの4しょうぐん」という中ボスを撃破した上で魔王を倒さないといけなくなるので時間的にも難易度的にも急激にシビアに。
でも大地の子にはちょっとした裏技というか救済措置が存在します。それがピクスボールというガチャポンです。

大地の子の筐体の横に置かれていることが多いこのピクスボールですが、ここでゲットしたフィギュアの所持個数に合わせて大地の子内で使えるアイテムが支給されるというボーナスが存在します。現実でいうamiiboみたいな感じのグッズです。
例として、スライムのピクスボールは味方全員のHPを回復する「たいりょくサプリ」、マッドラッドのピクスボールは封鎖された場所を解放できる「まほうのかぎ」に変換されます。何気に凄く便利なアイテムも貰えるのであるのとないのでは難易度も変わってきますし、大地の子が難しいな…と思ったらまずはピクスボール集めをやるのをオススメします。
ピクスボールを回すためのトークン集めが結構大変なのですが、第7章の街中に塩(通貨)でトークンを売ってくれるロボットがいるので本格的に大地の子攻略に手を出すのはそこからでもいいかもしれません。ただし大地の子1周目をクリアすると高レア群のフィギュアが追加されるので、1周目だけは早めにクリアしておくのがオススメです。
ぶっちゃけな話、ゲームとしては本編よりも大地の子の方が面白いと思いました。ローグライク要素を取り入れたドラクエ風RPGというありそうでなかったゲーム性になっているのもあって、本編そっちのけでハマってしまう人も結構多そう。
総評:やり過ぎなぐらい描き込まれたドット絵世界のアドベンチャー、作り手が好きな物を詰め込んだようにも思える作品
緻密に描かれたドット絵世界を歩き回れるのが楽しいと思いつつも、やっていて退屈と感じた場面もまあまああって評価に困る作品というのが私の率直な感想です。超が付くほど緻密に描き込まれたドット絵もですが、ジブリっぽくもMOTHERっぽくも感じる雰囲気・2Dゼルダ風のダンジョン攻略パート・作中作にもかかわらず作り込まれたドラクエ風RPG「大地の子」・フィギュアが出てくるガチャポンなど、作り手が好きな物や作りたい物を詰め込めるだけ詰め込んだ作品であるようにも感じられました。しかしその代償か手が回っていないようにも感じる所が少なからずあって、それがメインストーリーを進めていると嫌でも目立つ所に集中しているのが微妙と感じた所です。
プレイヤー側がゲームに何を求めているかによって感想や評価が大きく変わってきてしまう作品というのが私が出した結論です。ドット絵アートや風変わりな世界観を求めるなら◎ですが、操作していて楽しいゲームを求めるなら×ぐらいにはなってしまうかも。
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