3秒でげーむおーばー。

【Steam/Switch】『GOODBYE WORLD』を遊んだ感想&レビュー【クリア済】

2022/11/17
ゲーム感想&レビュー 0
Steamゲーム PCゲーム Switchソフト アドベンチャー
『GOODBYE WORLD』を購入しました。

可愛いドット絵と凄く不穏なタイトルに気を引かれて購入しました。理想と現実の壁にぶち当たってしまった2人のゲームクリエイターの物語を描いたアドベンチャーゲームです。
読了までにかかった時間は1.5時間程度でとてもコンパクト。でも凄く濃い時間でした…。
ジャンル的にネタバレ厳禁な作品なので本記事でもネタバレは極力避けるようにしています。どうしても書きたかった所は黒塗りにしていますが、既に買うつもりの人はできるだけ事前情報を仕入れない方が楽しめると思うのでブラウザバック推奨。

任天堂の公式オンラインストア。「GOODBYE WORLD ダウンロード版」の販売ページ。マイニンテンドーストアではNintendo Switch(スイッチ)やゲームソフト、ストア限定、オリジナルの商品を販売しています。
・タイトル:GOODBYE WORLD
・発売元:Flyhigh Works / IndieArk
・開発元:YO FUJII
・対応ハード:PC(Steam)/Switch
・定価:1200円(税込)
・発売日:2022年11月17日
・ジャンル:ナラティブアドベンチャー
・IARC:7+(7歳以上対象)
・プレイ人数:1人
・権利表記:©ISOLATION STUDIO

どういう人にオススメ?
・ゲーム開発に携わりたいと思っている人!

良かった点
・あまりにも上手くいかない現実が辛すぎる
・ゲーム内ゲームは荒削りではあるがちゃんと面白さがある
・ゲームボーイカラーの仕様再現度が地味に高い

賛否両論?点
・なんでルート分岐がないんですか…?(泣)

備考
(当ブログの画像はSwitch本体の機能を用いて撮影)




2人のゲームクリエイターの厳しい現実でプレイヤーも辛くなる


本作は蟹井熊手という名の2人のゲームクリエイターの物語。チームを組んでいて、蟹井がプログラマー・熊手がグラフィッカーです。
2人は元々同じ専門学校出身。卒業制作で組んだ相方の意見に納得がいかないご様子の蟹井を見て、熊手が自らドット絵を描くと提案した事がキッカケで知り合ったのが馴れ初めです。
メイン主人公は蟹井の方。この蟹井ちゃんが超がつくほどの職人気質でこだわりが強く頑固で、それが原因で色々な人との間に問題を起こしてしまいます。
彼女のレトロゲームに対する情熱と執着は凄く、卒業制作の時からドット絵に拘っていますし・未だにゲームボーイのソフトを遊んでいたりもします。ただ…彼女は興味が無い事柄や人物に対しては超がつくほどぶっきらぼうで、言い方は悪くなりますが強度のコミュ障です。
そんな蟹井を支える熊手はほぼ正反対の性格で他の人を感動させることに喜びを感じるタイプ。その手段として絵を書いているとのことでこだわりはあんまりなさそう。
専門学校を卒業後は2人とも企業に就職せずインディーゲームクリエイターになりました。夢のある話ですが、残念ながらここからが地獄の入口。
ゲームを作るのはいいけれども売れ行きは良くなく生活も困窮し、蟹井は不満が募るだけでなく元から難儀だった性格がさらに気難しくなってしまい、身銭を稼ぐためのバイトも続かないという状況に陥ってしまいます。そんな様子を見てきた熊手も不満が溜まっていたみたいで、ある日ついに蟹井に対して厳しい言葉を浴びせかけてしまう事に…。

こんな感じでとにかく厳しい現実が四方八方から襲いかかってくるので読んでいるだけの立場であるプレイヤー側も凄く辛くなってきます…。1章辺りにかかる時間はわずか5分程度ですが、短い分圧縮された鬱が13話も用意されています。
こんなに柔らかそうで暖かそうな可愛いドット絵ワールドなのに、物語の内容が南極で吹き荒ぶ吹雪のように残酷なのも意外性を感じるポイント。でもそのギャップもいい味を出しています。
以下の黒塗り部分にはストーリーのネタバレとセンシティブな内容を含んでいるので閲覧の際はご注意ください。あくまでも私の推測で公式設定ではない部分も含まれております。
傍から見ると蟹井ちゃんはかなりのワガママにも見えてしまうのですが、それが彼女の生まれ持った形質なのだと思います。彼女はASD傾向もADHD傾向もかなり強めで好きなことに対する集中力は凄いけどこだわりは曲げたくないし、興味のない事柄は勝手に頭から抜けていっちゃうし、他人の気持ちや暗黙の了解を感じ取るのが苦手なタイプのように見えました。
現代社会はそういうタイプの人に対して寛容とはいえないからこそ、長い間苦悩してきた結果「自分にはゲームを作る道しかない」と自ら追い込んでしまっている状態になっている感じがします。
それでも売れっ子クリエイターになれれば万々歳なのですが…現実には売ろうとして作っているつもりの作品が売れていなったりで"職業としてのゲームクリエイター"の才能があるか自体を疑わせる場面が少なくないし、逆に自分が作りたい物を作ると強すぎる拘りのせいで物理的に遊ぶ側のことを全く考えてない作品を作っちゃうしで、「商品としてのゲーム」を作るのには向いていないように見えてしまいます。趣味で作る分とプログラマーとしての才能は確かにあるのでしょうが…。
凄い悪い言い方をするとどこまでも自分本位かつ自己中心的な考え方の元でゲームを作っているので、同じような価値観を持つ人しか好まないニッチなゲームしか作れなかったのだと思います。特に彼女の場合は自分の作りたいものと世間のニーズが運が悪いことに噛み合っておらず、そのせいで熊手のように琴線にぶっ刺さってくれる人がいても人数が少なすぎて売上としては上がってこないので、結果的には失敗だったという判断に至ってしまうのかな…と。
だからといってゲームクリエイター以外の道があったかというと、彼女が持つこだわりや性格や傾向の面から考えてどの道厳しそうではあります。ここまで道が限られているとなると、働かずとも生活できる資産か強力なパトロンがいなかった時点で詰みが確定してしまっていた気までして、結局はお金の問題に行き着いてしまうような…。

また、本作では趣味や学校の課題としてのゲーム制作と仕事としてのゲーム制作には大きな差がある所もしっかり表現されていて、ビジネスだと自分がやりたいことも需要がなければ後回しせざるを得ないし・自分が作りたい物ではなく売れる物を優先して作らないといけないという焦りもあるしで、「好きな物でも仕事にすると嫌いになる」という言葉の通りの事が描かれているようにも思えました。
インディーゲームに対する見方についてもちょっと変わってしまいまして、私が元々抱いていたイメージでは大企業産のゲームとは違いクリエイターが作りたい物を形にしているという印象だったのですが、本作で描かれている限りだとそうやって成功しているパターンはひと握り所かなんなら生活のために作りたくないものを作って売れない事もかなり多いのかも…と思いました。近年はクラウドファンディングで開発資金を集める方法もよく見られますが、この方法も需要がある程度見込めないと人もお金も集まらないはずですし。
特にSteamなんかはライバルが多すぎて埋もれている作品が実際多いですし…。私が遊んでいるほとんどのインディー作品はSwitchにも移植されている時点で選ばれし勝ち組なのかも…とも思いました。
ただ、本作は完全に鬱しかないストーリーという訳ではなくて、最後の最後にボソッと言われる2人のセリフに救われる人も少なくないはず。ここで純粋に2人のことを良かったと思えるか・茶番に付き合わされたと思ってしまうかでも評価が大きく変わってしまうので、人によって合う合わないはハッキリ分かれる物語だとは思います。

ゲーム内ゲーム「BLOCKS」は荒削りなレトロゲームを再現


蟹井ちゃんがいつも遊んでいるゲームはプレイヤー側も遊ぶことができます。それが「BLOCKS」というパズルアクションゲーム
まさかまさかのゲームボーイのゲーム(作中の時間軸は2017~2021年)で紛うことなきレトロです。本体もボロボロでずっと遊んでいることが何となく伝わってきます。
このBLOCKSはちょっとカービィ感のある見た目ですが、道中に設置されているブロックを破壊するとそのブロックを自分の好きな場所に置けるようになるシステムが採用されています。Bジャンプでなく十字キー↑でのジャンプなど、今どきでは中々見ないキー配置になっているのもレトロゲームらしい所。
ただしかなり荒削りな作品です。レベルデザインが極端で2面から一気に難しくなるし・詰み盤面がよく発生するし・残機制な上にリスタートするだけでも減ってしまうし・キー配置も難儀だし…。
でも蟹井ちゃんもこのゲームの感想を聞かれた時に「微妙」と言っているので…。良い所も悪い所もひっくるめて微妙なレトロゲームらしさを体現した結果だと思います。
ただし、遊びにくくはされているとはいえゲーム内ゲームとしてはかなりしっかり作られていて、やりごたえのある難易度と壊したブロックを自分で使えるという独特なシステムのおかげで割と面白かったです。真面目にやっても残機を3つ使い切るぐらいには難しいですが…。
ちなみに、ゲームオーバーになってもストーリーは進むし・結果でルート分岐するなどの仕様もないので、2Dアクションゲームが苦手な人も全然大丈夫。でも真面目に遊んでおいた方がストーリーに浸れるという点ではいいかも?
なお、このゲームボーイカラー本体は起動時に出るNintendo®のロゴがバグったり・起動中に方向キー入力で画面の色合いを変えることができるといった、リアルのGBCの仕様を再現した小ネタが仕組まれています。色替えできるのに気づいた時はおお~と思ってしまいました。
この起動時にロゴがバグるやつ、現実のGBCならバグった表示が出ている時点でソフトが起動しないようになっているのですが、本作では普通にBLOCKSが起動します。このことからこのソフトが正式に販売されたものではない非公認ソフトなのでは…という伏線になっていたり?



総評:売れないゲームクリエイターの辛い現実をガッツリ味わえる良作アドベンチャー

2時間あれば読了できてしまう程に短い作品ですが、やたら高い解像度の現実描写でプレイヤーの心をグサグサ刺してくる鋭いナイフのような物語。辛かったけど良かった作品です。
ゲームを作ってみたいと思ったことはある身なので、作中で現実問題をバンバン提示されるだけでもしんどかったです…。これがインディーゲーム開発の現実だとしたら修羅の道すぎる…。
オマケにごく一部の有名インディーゲームの裏にはたくさんの屍が築かれてるんやな…とも想像してしまいました。ついでに一番の問題はやっぱりお金だとも。
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